戦前も同一ホームだったJR山手線渋谷駅 いつ、なぜ2面に? 外回りホームと共に消えた“記憶”

渋谷駅は日本全国で行われている駅再開発の中でも、トップクラスの激変ぶりです。東急東横線、東京メトロ銀座線、JR埼京線ホームの改良と進み、いよいよ山手線も島式ホーム1面となりました。

10年前、東横線ホームが地下に潜った

 渋谷駅とその周辺の再開発はこの10年間で、かなり本格化しています。渋谷ヒカリエ、渋谷ストリーム、渋谷スクランブルスクエアといった高層ビルが聳え、今まさに南側の桜丘地区では2023年度の竣工を目指して複数のビルが建設中です。  駅へ目を向けると、東急東横線ホームの地下化はもう遠い昔のよう。2013(平成25)年のことでした。東京メトロ銀座線ホームも明治通り側へ移転して久しく、人々の動線は慣れたように続きます。東急百貨店東横店西館ビルは銀座線の高さまで解体が済み、南館と共に一旦ストップしています。

 JR渋谷駅では、2015(平成27)年から改良工事が進行してきました。たかが外回りホームが無くなるだけで騒ぐのかとお思いかもしれませんが、この駅はターミナルビルと周辺の街ごと激変しており、しかも世界有数の乗降数を誇りながら電車を止めずに日々工事が行われてきています。国内でもここまで大掛かりな工事はあまり例がありません。 さて、南側にあった埼京線・湘南新宿ラインのホームが2020年5月に移動し、山手線と並列化することで利便性が向上しました。翌年10月には山手線内回りを2日間運休させて、線路を東側へ移設しながら内回りホームを拡幅しました。電車を日々走らせながら準備工事を行い、まとめて運休することで一気に改良工事を進行させる。工期を遅らせることのできない大変な作業が、渋谷駅では何度か実施されてきました。

実は回帰? 82年前も同一ホームだった山手線

 山手線は外回りと内回り別々のホームを使用してきましたが、2023年1月9日(月)、いよいよ拡幅した内回りホーム1面のみの使用となり、外回りホームは廃止に。1月7日~8日にかけて4度目の改良工事が実施されました。

 今回は外回り電車を大崎~池袋間で運休させて振替輸送を実施し、運休の間に外回りホームの一部を解体。そこに線路を移設して内回りホームの一部を拡幅し、ホームの島式化を行い「内・外回り同一ホーム」としたのです。島式1面の山手線ホームは、おそらくほとんどの人が初めて見るのではないでしょうか。 というのも、ホームはかつて1面でした。1940(昭和15)年7月の改良工事によって2面となってから、2023年1月までの82年と6か月間供用されてきて、その姿の方が私たちにとって当たり前だったのです。そのため、ホームの幅は異なれども、戦前の姿に戻ったともいえるかもしれません。 なお、外回りホームが誕生した経緯を振り返ると、昭和10年代前半に東京横浜電鉄東横線(現・東急東横線)、玉川電気鉄道玉川線(一部、現・東急田園都市線)、帝都電鉄井の頭線(現・京王井の頭線)と、百貨店併設のビル内で連絡すべく、利便性向上や混雑緩和などが図られたため。当時は駅がターミナルビル化しつつありました。80年以上続いた内・外回り2面構造のホームは、路線どうしの乗り換えだけでなく、百貨店などの動線とも密接に結びつき、人々の記憶に刻まれていたのです。

最後の終電と特別なアナウンス

 私(吉永陽一:写真作家)は1月6日(金)から翌7日(土)にかけて、外回りホームのラストを見送りました。幼少期よりこのホームに馴染みがあったので、人生と共に歩んできたホームが無くなることに、一抹の寂しさを覚えます。長年利用してきた者として最後の瞬間を目に焼き付けようと、最終日に改めて外回りホームへ上がって観察してみると、カーブした構造、銀座線の高架橋、ホーム開設時から存在すると思われる鋼鉄の支柱など、駅の歴史を物語るものがまだ残されていました。 床面は準備工事が完了しており、線路側は板で覆われています。終電後はこの板を一気に撤去し、支えていた土台を撤去するのです。また一部の上屋支柱は、線路移設に際して車両と接触する可能性があるため、既に切断されて仮支えとなっています。これらの準備工事は終電後のわずかな時間で施工することが多く、気が付いたら変化していました。

 日付が変わって1月7日(土)の午前0時半。終電は33分発ですが、京浜東北線の遅れにより7分遅れと放送が入りました。ホームはいつものように終電で帰宅する人々が並び、整然と電車を待ちます。0時39分、最終の池袋行き2423G列車がゆっくりとホームへ進入してきました。ほとんどの人々は乗り込み、ホームに残るのは最後の勇姿を記録するファンと工事の関係者です。「これまで82年と長い間ご利用いただきまして誠にありがとうございました。来週月曜日になりますと、島式ホームという形で新しく生まれ変わります」 特別な構内放送が入ります。発車メロディが鳴り、終電は発車。最後は駅長による凛とした指差喚呼によって、外回りホームの幕が下りたのでした。

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