戦闘機100機持つ民間企業!? 英空軍が“軍事請負会社”利用開始 「国防に優れた費用対効果」

アメリカの軍事サービス企業の子会社がイギリスでチェコ製戦闘機を飛ばし始めました。ただ、これはイギリス空軍から正式に業務委託を受けて行っていること。自衛隊の経費圧縮を考えると日本も学ぶべき点があるかもしれません。

100機以上の戦闘機をそろえる民間企業

 イギリス空軍のユーロファイター「タイフーン」戦闘機が2022年12月20日、これまでと異なる相手と初訓練を実施しました。その機体はチェコのアエロ・ボドホディ社製L-159「ハニー・バジャー」。この機体は、ロシアとその隣国で多数が運用されていたジェット練習機L-39をベースに開発された軽戦闘機です。 機体もレアですが、今回の訓練ではそれを運用する組織も変わっていました。このL-159を飛ばしているのは、軍隊ではなく、なんと民間企業なのです。

 今回の訓練でL-159を飛ばしていたのはドラケン・ヨーロッパという民間の軍事請負企業です。この企業の母体はアメリカにあるドラケン・インターナショナルで、アメリカ空軍や海兵隊の訓練で自前の戦闘機を飛ばすことを業務としています。このため、同社ではこのL-159を含めて100機以上の退役戦闘機を民間企業として保有しており、それを軍の要望に合わせて訓練で飛行させています。 同社では機体のパイロットはもちろんのこと、メンテナンス要員と整備部品まで自前で用意しており、軍や他企業の支援なしで独自に戦闘機を飛ばすことができます。また、仕事を発注する側の軍としても、自前の現役戦闘機を飛ばすよりも安いコストで訓練を行えるというメリットがあります。 世界中の空軍では、訓練で敵役を専門に行う部隊を運用しています。アメリカ空軍ではアグレッサー飛行隊、アメリカ海軍と海兵隊ではアドバーサリー部隊とそれぞれ呼んでおり、航空自衛隊にも「アグレッサー」の通称で有名な飛行教導群が存在しています。

イギリス軍が民間企業を頼ったワケ

 これら部隊ではハイレベルな訓練環境を提供するために、ベテランパイロットが現役戦闘機を操縦していますが、すべての訓練を最高の機材で行う必要はなく、その一部を民間企業が低コストで肩代わりするのです。 だからこそ、その部分に民間の軍事請負企業は参入し、利益を上げているといえ、2023年現在、アメリカを中心にドラケン・インターナショナルのような民間企業は複数存在しています。

 イギリス空軍とドラケン・ヨーロッパは、「暫定・レッドエア・アグレッサー・トレーニング・サービス(IRAATS)」という名前で2022年3月に契約を結んでおり、その期間は3年間。さらにオプションとして追加で3年間の契約延長も含まれているそうです。これまで同様の任務は、イギリス空軍がジェット練習機「ホークT.1」を使って自前で行っていましたが、同機がイギリス空軍の訓練部隊から退役することから、その業務を民間委託することになり、それが今回の契約へと繋がりました。 今回の初訓練に際して、イギリス空軍の上級責任者であるタウンゼント准将(Air Commodore)は次のコメントを発表しています。「このサービスだと、戦闘機パイロットに真の挑戦をもたらし、将来の作戦のためにより効果的な訓練を行えます。(この契約は)手頃な価格で提供可能であり、国防に優れた費用対効果を提供します」。 軍事や防衛の分野でコスト削減による業務の民間委託は珍しくありませんが、それがジェット戦闘機を飛ばすことにまで及ぶのはちょっと意外かもしれません。しかし、ドラケン・ヨーロッパのような企業がすでに複数存在し、実は日本国内でもATACという企業が在日米軍を対象に活動を行っています。 このような事業が成長を遂げているところを鑑みると、今後は他国でもそのような民間企業は珍しいものではなくなり、もしかしたら日本国内でも同種の会社が誕生するかもしれません。

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