
新成人が生まれた頃に登場した鉄道車両、いわば鉄道版「新成人」には、何があるのでしょうか。登場して20年となる鉄道車両5形式をピックアップしました。
2002年度に登場した車両は?
1月9日(月)は「成人の日」です。今回20歳を迎えるのは、2002(平成14)年4月から2003(平成15)年3月までに生まれた人たちですが、時を同じくして製造された鉄道車両には何があるでしょうか。ここでは、2002年度に登場した車両を5形式ピックアップし紹介します。
JR東日本E231系電車500番台
JR山手線の先代車両が、E231系電車500番台です。2023年現在は全ての編成が中央・総武線各駅停車で使われており、登場時には緑色だった帯も黄色へ変更されています。
もともとE231系は2000(平成12)年、首都圏の103系電車や115系電車などを置き替える目的で登場。省エネ化やメンテナンスコスト低減、旅客案内の向上などが図られました。ただほかの路線とは違い、6扉車が組み込まれたり車内に案内ディスプレイが設置されたりした山手線では500番台に区分され、前面の形状も独特なものとなりました。 その後、新型E235系電車に順次置き替えられ、2020年に山手線から撤退。しかし、改造され形式もE235系に改められてはいるものの、現在も一部編成の中間車両として元・E231系500番台が現役です。
京急新1000形電車
つい昨年の2022年、鉄道友の会会員が投票で選ぶ「ブルーリボン賞」を受賞したのが京急新1000形電車です。この車両は長きにわたりマイナーチェンジを繰り返しながら製造が続けられているため、受賞したのは2021年登場の1890番台(20次車)ですが、1次車は2002年に登場しています。 新1000形は前代の1000形電車などを置き替えるために登場。省エネ化やメンテナンスコスト低減が図られたほか、車端部にクロスシートが、窓間にロングシートが配置されたのも特徴のひとつです。 当初は車体がアルミ製でしたが、2007(平成19)年の6次車以降は京急初のステンレス製となりました。20年間で様々な改良が加えられ、20次車に至ってはトイレのほか全席へのコンセントの設置、自動回転式座席の採用が行われています。
JR北海道789系電車0番台 かつては“越境”も
続いて北の大地で活躍する特急形電車789系0番台を紹介します。2023年現在は札幌~旭川間を結ぶ特急「ライラック」として使われ、先頭車両には沿線の観光名所などがラッピングされています。
もともとはJR津軽海峡線の輸送力強化を目的に登場。2002年12月、東北新幹線が八戸駅まで延伸された際、八戸~函館間の特急「スーパー白鳥」としてデビューしています。 0番台は長大な青函トンネルを通過するため防音性能が高められ、客室の気密性も強化されています。連続勾配区間でも高速を維持でき、また外見では先頭車両に乗務員用扉がなく、旅客用と共同という特徴があります。 新幹線の新青森駅延伸後は運行範囲が青森駅まで狭められ、さらに北海道新幹線の開業(新函館北斗駅延伸)後は「スーパー白鳥」自体が廃止となり現在に至ります。なお一時期、JR北海道の車両でありながら青森県内で完結する特急「つがる」に使われたことがあります。
近鉄21020系電車「アーバンライナーnext」
初代の名阪特急「アーバンライナー」として活躍した近鉄21000系電車の後継として、2003年3月に定期運行を開始しました。どちらも流線形の車体ですが、21000系と比較するとやや丸みを帯びたデザインです。 主に旅客サービス向上が図られ、女性用トイレや喫煙室の設置が行われました。目玉は、背もたれを倒すと座面後方が連動して沈み込み、体が包み込まれるような形状の「ゆりかご型シート」の設置です。これはデラックスシート、レギュラーシートどちらにも採用されました。 2020年3月、「ひのとり」こと近鉄80000系電車が名阪特急にデビューして以降、「アーバンライナーnext」は21000系とともに、停車駅の多い運用に就いています。
東急5000系電車 私鉄で唯一の6扉車
初めに紹介したJR東日本のE231系と、基本設計を共通化して登場したのが東急5000系電車です。田園都市線の主力車両であるほか、東横線でもわずかに使われています。
省エネ化やメンテナンスコストの低減、バリアフリー化を目指しつつ、従来の8500系電車を置き替える目的で登場しました。自社グループ会社で車両製造を手掛ける東急電鉄は、当時のJRとも知見を共有し、次世代の車両を開発。消費電力に至っては8500系の約6割となり、騒音も低減されました。 そして一部編成には、私鉄で唯一の6扉車両が連結されていましたが、ホームドアの整備により2017年に消滅。また初期車は更新工事を受け、案内ディスプレイの大型化なども行われました。※ ※ ※ ほかにも2002年度に登場した車両として、営団地下鉄(現・東京メトロ)08系電車や名鉄300系電車などがあります。各社とも21世紀にふさわしい車両を造ろうと、環境負荷やバリアフリー化に注力し開発・製造しているのが特徴です。