2023年ゴルフ界、誰もがフェアでありたい【舩越園子コラム】

暦が2023年に変わり、米ゴルフ界では「新たなツアーが世界ランキングの対象に加わった」ことが話題になっている。

「世界ランキング」「新たなツアーが対象」と聞けば、ゴルフファンの多くは「LIVゴルフでも世界ランキングのポイントが稼げることになったのかな?」と思うかもしれない。

しかし、今年から世界ランキング対象ツアーに仲間入りしたのは、LIVゴルフではなく、メキシコツアー(メキシコ・ゴルフプロフェッショナル・ツアー)だ。

昨年6月に創設されたLIVゴルフが「世界ランキングのポイントが稼げるツアーとして承認してほしい」とOWGR(オフィシャル・ワールド・ゴルフ・ランキング)に申請している真っ只中で、実際に承認されたのはLIVゴルフではなくメキシコツアーだったという展開だが、この事実をどう解釈するべきかを考えてみた。

メキシコツアーもLIVゴルフも試合のフォーマットは3日間54ホールで共通している。だが、メキシコツアーには36ホール後の予選カットがあるのに対し、LIVゴルフでは予選カットが行われていない。

メキシコツアーにはQスクール(予選会)があり、一般に門戸が開かれているが、LIVゴルフへの扉の開け方は、いまなお公開されてはおらず、秘密のカギがかけられたままの状態だ。

そして、LIVゴルフは完全に独立したツアーとして創設・維持されているが、メキシコツアーはPGAツアー・ラテン・アメリカの下部ツアー的な位置づけにあり、さらにはメキシコ・ゴルフ連盟のお墨付きもある。

予選カットが行われることによる競争性、予選会からの進出の道があるというオープン性、既存のゴルフ機関やPGAツアーとの関係性を併せ持つことが考慮された上で、メキシコツアーはOWGRから承認されたと考えるのが妥当である。

しかし、だからと言って、LIVゴルフがOWGRから承認されないのかと言えば、もちろん、そう言い切ることはできない。

米メディアは「新たなツアーが世界ランキングの対象に加わった」と記した上で、「しかし、それはLIVゴルフではない」と、わざわざ断り書きを付け、LIVゴルフと世界ランキングの距離感をより一層強調している。

確かに、新たに承認されたのは「LIVゴルフではなくメキシコツアーだった」わけで、それは紛れもない事実だが、ちょっとばかり見方を変えると、その事実から得られる印象は大きく変わってくる。

これまではOWGRが新たに承認するツアーは「あるのか?」「ないのでは?」と見方は分かれていた中で、スターと呼ばれる選手が皆無に近いメキシコツアーでさえ認められたのだから、スター選手が勢揃いしているLIVゴルフが今後、「認められないはずはないよね」と誰にも思えてくるのではないだろうか。OWGRとて「世界の総意」を無視することはできなくなるのではないだろうか。

その意味では、メキシコツアーがOWGRから新たに承認されたことは、LIVゴルフに先行するうれしい前例と考えることができる。

さらに言えば、メキシコツアーは2017年の創設から5年、OWGRに申請を提出してから16カ月の歳月を経て、今年から世界ランキングの対象ツアーとして承認されたのだから、昨年6月に創設されたばかりのLIVゴルフだって、即座の承認は難しくても、数年後に承認される可能性は大いにある。

「そうなってほしい」という意味ではない。「そうなってほしくない」という意味でもない。あくまでもフェアな視点に立って眺めた場合の「可能性の話」だ。

昨年、一気に高まったPGAツアーとLIVゴルフの確執は、浮上してきた1つ1つの事象を、それぞれがどう受け止め、どう解釈し、どう表現したかによって、人々にもたらした印象は様変わりしたように思う。

PGAツアーに残った選手もLIVゴルフへ移籍した選手も、あるいはPGAツアーを率いるジェイ・モナハン会長もLIVゴルフを率いるグレッグ・ノーマンCEOも、1つ1つの事実に対する意見や見方、発信の仕方が少しばかり違っていたら、周囲への影響の仕方は大きく異なっていたのだと思う。

1つ1つの事象を、感情はさておき、もっとフェアに眺め、フェアに解釈し、フェアに発信していたら、両者の対立や確執は今ほど大きくなっていなかったのかもしれない。

ツアー関係者、メディアも然り。私自身も自戒を込めて、2023年はゴルフ界の誰もが直面する事象にフェアであることを心掛け、ゴルフ界の平和的な成長と発展を願いたい。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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