衝撃の「ロングシート“有料座席”」本当にうれしーのか? 大阪横断の新サービス 乗ってわかった狙い

JR西日本が有料座席サービス「快速 うれしート」をロングシートでも導入。車内を「のれん」で仕切り、12席を有料扱いとしています。どのように使われているのか、実際に乗ってみました。

ロングシートの“うれシート”は、ほぼ「学研都市線のため」

 JR西日本が2025年10月14日から、学研都市線(片町線)・JR東西線・JR宝塚線(福知山線)を走る快速の一部に、有料座席サービス「快速 うれしート」を設定しています。「うれしート」はほかの関西や広島地区の路線にも設定されていますが、この学研都市線・JR東西線では初めての導入、しかも“ロングシート”であることが特徴です。今回、実際に乗車して利用の実態を確かめてみました。

 学研都市線は大阪の京橋をターミナルとして東側の郊外を通り木津に至る路線です。JR東西線は大阪都心部の地下線で京橋と尼崎の間を結び、尼崎から先はJR神戸線(東海道・山陽本線)やJR宝塚線と直通する列車が運転されています。

 先の通り、「うれしート」の列車は学研都市線・JR東西線・JR宝塚線を結ぶ快速列車のうち、学研都市線側のラッシュに合わせて朝の木津発と、夕方から夜にかけての木津行きが設定されていますが、いずれも平日のみです。結果として、直通先のJR宝塚線ではラッシュと逆の方向に「うれしート」が設定されています。

 しかし、JR宝塚線には大阪発着の列車に「うれしート」があり、こちらは朝の大阪行きと夕方から夜間にかけての宝塚方面行きが設定され、ラッシュの方向に合わせています。

 筆者(柴田東吾:鉄道趣味ライター)が乗車した列車は、夕方の宝塚発木津行きの快速です。尼崎17時01分発→木津18時23分着で乗車しました。

「うれしート」は、最後尾車両の1区画を「のれん」で区切り、有料エリアとして設定しています。他路線の「うれしート」と同じく、車内設備に大きく手を加えることなく、既存の座席を指定席としています。

「うれしート」を利用する際に必要な指定席券は、通常期530円、閑散期330円ですが、チケットレス指定席券だと300円です。また、使用車両は207系と321系の2種類ですが、今回乗車したのは321系でした。

 尼崎で扉が開いた時点では、「うれしート」の乗客は0でしたが、その後、筆者ともう1人が「うれしート」に着席して2人に。ただ、この時点では「うれしート」以外の一般の座席にも空席がありました。

 尼崎を発車した快速は、JR東西線を各駅に停まって大阪の都心部を走ります。途中の御幣島では1人加わり、「うれしート」が3人となりました。

「のれん」に気付かない人も?

 JR東西線は大阪駅を通りませんが、大阪駅に最も近いのが北新地です。北新地では多くの乗客が乗車し、座席が埋まって立席が出るようになります。

「うれしート」については、車内に加えて駅でも案内放送が行われています。そのため大半の乗客は「うれしート」を認識しており、避けて乗車しています。

「うれしート」の有料エリアに入ってくる利用者もいますが、「のれん」の存在に気付いて立ち去ってしまいます。しかしなかには、着席してから有料であることに気付き、「うれしート」の有料エリアから出ていく人や、乗務員に促されてようやく「うれしート」の有料エリアから去っていく人もいました。「のれん」が目の前にありますが、それでも気付かない人もいるようです。

 北新地の一つ隣、大阪天満宮では2人が加わり、これで「うれしート」の利用者は5人となりました。

 学研都市線・JR東西線の「うれしート」は6人がけのロングシート二つを有料としています。定員は合計12人で、このときの利用率は約4割。「うれしート」は端の席が埋まり、端に座れなかった人は中央の座席を利用していました。

「うれしート」では、予約の際に座席の位置を指定できます。「うれしート」が設定された他の列車の状況を見ても、やはり端の席から埋まっています。

 さて、列車が京橋に到着すると、「うれしート」以外は通路までギッシリと埋まるほどの混み具合となりました。ここで「うれしート」から乗客が1人降りていきましたが、お試し利用だったのでしょうか。

 京橋を出ると、郊外の長尾まで通過駅が設定されて快速運転が行われます。途中の快速停車駅では、「うれしート」以外の一般の客室から乗客が降りていく流れで、列車は少しずつ空いていきます。「うれしート」の乗客も途中の四條畷(しじょうなわて)で、1人降りていきました。

 次いで、長尾で「うれしート」の乗客が2人降りていき、ここから先で「うれしート」に乗車している客は筆者1人だけとなりました。

 一般の座席で立席の乗客がいなくなったのは一つ先の松井山手で、ここから先は一般の座席も空席が目立つようになります。学研都市線のなかで、大阪の都心部と郊外を結ぶ役割を持つのが京橋~松井山手間で、乗客の流れと合っています。

 乗車があった大阪天満宮から四條畷までの所要時間は約20分、長尾までは30分弱で、最低300円支払うと着席できる意義は大きいはずです。しかし、学研都市線から少し離れて路線が並行している京阪電車は、座席指定特別車両の「プレミアムカー」が400円から500円で利用できてしまうため、見劣りは否めないのかもしれません。

 学研都市線・JR東西線の「うれしート」はラッシュのピークを避けて設定され、設定本数も少ないのが現状です。今後、「うれしート」の利用が定着するのか、注目されるところです。

externallink関連リンク

【この先有料】営業中のロングシート「うれしート」を見る(写真)西日本屈指の「秘境ターミナル駅」、なぜここまで衰退したのか?山手線の「最閑散駅」ついに大変貌へ! 南北になが~い“都心最大級の街”が出現
externallinkコメント一覧

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)