【ワシントン時事】米ニュースサイト「アクシオス」は20日、ロシアの侵攻終結に向けた28項目の新和平案の全容を報じた。ウクライナ軍兵力を60万人に制限するほか、同国東部2州の割譲を迫る内容。米側は集団防衛義務を定めた北大西洋条約機構(NATO)条約第5条をモデルとする「安全の保証」の枠組み案もウクライナに示した。
和平案はトランプ政権が策定を主導し、ロシアと協議の上でウクライナ側に提示した。米側はこう着する和平交渉の局面打開を目指すが、ウクライナは領土放棄などを拒否しており、和平実現には不透明感も漂う。
アクシオスによれば、ウクライナ軍の現有兵力は80万~85万人だが、大幅な削減を求められる。米国がウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク両州)や南部クリミア半島を事実上のロシア領と認めるほか、ウクライナ軍が現在支配するドネツク州の一部から撤退し、ロシア領の非武装地帯とすることも盛り込まれた。
NATO非加盟の方針をウクライナ憲法に明記するほか、NATOが将来にわたってウクライナの加盟を認めないとすることも要求。ウクライナに信頼できる「安全の保証」を提供するが、NATOはウクライナに部隊を駐留しないとした。
ロシアについては、周辺国に侵攻しないことを「期待される」との表現にとどまる一方、「国際経済に再統合される」と明記した。主要8カ国(G8)への復帰を招待するとも記された。
和平案と共に明らかになった安全の保証に関する枠組み案は、ロシアによるウクライナ領への「重大かつ意図的、継続的な武力攻撃」が発生した場合、「大西洋共同体の平和と安全を脅かす」と明示。米大統領がNATOなどと協議し、武力行使を含む「安全の回復に必要な措置」を決めると定めている。
ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、首都キーウを訪問したドリスコル米陸軍長官と会談した。ドリスコル氏は新和平案と枠組み案を提示。ゼレンスキー氏はその後、「ウクライナと米国で項目を調整していく」と表明した。
〔写真説明〕20日、キーウでドリスコル米陸軍長官(右)と会談するウクライナのゼレンスキー大統領(左)=大統領府提供(AFP時事)
〔写真説明〕破壊された住宅のがれきの中を歩くウクライナ軍兵士=15日、ドネツク州(AFP時事)

