【北京時事】中国の官製メディアが、沖縄の日本帰属に疑義を呈する論評を相次いで発表している。「琉球」が歴史的に中国と緊密な関係を持ってきたことや、沖縄における日本の「差別的政策」を強調。日本政府はこうした中国の宣伝工作に取り合わない構えだが、高市早苗首相の台湾有事を巡る発言への対抗カードとして、日本側を揺さぶる狙いとみられる。
共産党機関紙系の環球時報は19日、「琉球学の研究はなぜ必要か」と題する社説を掲載した。琉球が中国の明朝に対して朝貢関係を結んでいたことなどに触れた上で、明治政府が「武力による脅迫的な手段」で併合を進めたと主張。「琉球諸島の主権の帰属については、歴史的、法的な論争が常に存在してきた」とつづった。
これに先立つ15日、党傘下の英字紙チャイナ・デーリー(電子版)は「琉球は日本ではない」との見出しで、沖縄にルーツを持つ活動家、ロバート・カジワラ氏へのインタビュー動画を配信した。動画では、琉球・沖縄は長く「独立国」だったが、19世紀に日本が「侵略、植民地化」し、同化政策を進めてきたと一方的に説明。第2次大戦後、日本のかつての占領地が次々と主権を取り戻す中、「琉球だけが例外だった」などと語った。
官製メディアの中国吉林網は「日本側が中国のレッドライン(台湾問題)に触れるのであれば、琉球問題を議題にすべきだ」と指摘した。
中国は過去にも、沖縄県・尖閣諸島や台湾の問題に絡み、同様の手法で日本側をけん制してきた。日本政府の尖閣国有化をきっかけに関係が悪化していた2013年には、党機関紙・人民日報が、沖縄の帰属は「未解決」とする研究者の論文を掲載。23年には、習近平国家主席が中国と琉球のつながりの深さに言及した。習氏のこうした発言は異例で、日本が台湾問題への関与を深めていたことが念頭にあったとみられている。
〔写真説明〕中国の習近平国家主席=12日、北京(AFP時事)

