東京大と大阪大、久留米大の研究チームがマウスの脳全体の活動を時系列で解析したところ、8割近い領域で24時間周期の活動リズムがあることが分かった。睡眠や記憶など脳の活動を時系列で調べる研究への応用が期待できるという。論文は14日、米科学誌サイエンスに掲載された。
全身の体内時計を制御する脳の「視交叉上核」と呼ばれる部位は24時間周期で活動していることが知られていたが、他の領域でも同様のリズムがあるのかは分かっていなかった。
東大の上田泰己教授らは、2014年に開発した技術でマウスの脳全体を透明化した上で、活動中の神経細胞から出るたんぱく質に反応して光る抗体を使い可視化。4時間ごとに2日間にわたって分析し、脳全体の活動リズムを調べた。
その結果、脳を642に分けた領域のうち、79%に当たる508の領域で24時間周期の活動リズムが存在した。マウスは夜行性のため、多くの領域は起きている夜間に活動ピークがあったが、記憶に関連する「海馬」では、睡眠中の昼間にピークを迎える領域と、夜がピークとなる領域の両方があった。
上田教授は「脳のどの場所がどの時間帯に寝ているか、活動しているかはまだ分からないことが多い。うつ病などでは体内時計の異常が知られているので、この技術を基盤に推定していくとうまくいくかもしれない」と話した。
〔写真説明〕活動のピーク時刻を色違いで示したマウスの脳の断面図(東京大提供)

