出航判断巡り対立=弁護側「船長がコース変更」―知床観光船初公判

 「予定通りのコースで運航された」「午前中で帰港する航路と認識していた」。釧路地裁で12日開かれた観光船「KAZU I(カズワン)」沈没事故の初公判では、争点となった悪天候の下での出航判断を巡り検察、弁護側の双方の主張が対立した。
 カズワンは2022年の運航初日だった4月23日午前10時ごろ、ウトロ漁港(北海道斜里町)を出港し、昼前に知床岬付近で折り返した後で沈没。乗客乗員20人が死亡、6人が行方不明となった。
 検察側は冒頭陳述で、同業他社に先んじて知床岬コースで運航することが、事前に決まっていたと主張。天候悪化時に引き返す「条件付き運航」の場合に必ず行う乗客への説明は実施しておらず、海上保安官が事故当日に事情聴取した際、桂田精一被告(62)が「(知床)岬コースを運航予定だった」と答えたと訴えた。
 一方、弁護側の冒頭陳述によると、事故当日の朝、桂田被告は船長と出航について協議。午後に荒天となる可能性を認識した上で、朝の風や波は強くなかったことから、条件付き運航との船長判断を了承した。
 桂田被告は、午前中での帰港を前提とする短縮コースだと理解しており、「船長が運航管理者である被告に情報提供や助言を求めず、独自の判断に基づき航路を変更した」と訴えた。
 運航中の事務所との連絡手段についても、双方の主張が対立。検察側は桂田被告が運航管理者として船との定点連絡などを行わず、事務所の無線機アンテナも破損していたなどとしたが、弁護側は「航行中の通信機器として携帯電話を貸与していたほか、船の無線機で同業者に連絡できるようにしていた」と反論した。 
〔写真説明〕知床観光船事故の初公判が行われた釧路地裁の法廷=12日、北海道釧路市(代表撮影)

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