「修理」選択、解体の約半数=能登6市町の全・半壊住家―背景に費用高騰や業者不足

 昨年の能登半島地震や豪雨で「半壊以上」の被害認定を受けた石川県七尾市以北6市町の住家のうち、修理費用の一部を自治体が負担する「応急修理制度」を利用したのは公費解体を選択したケースの約半数にとどまることが6日、分かった。背景に高騰する修理費用や業者不足があり、直して住む選択が被災者にとって難しくなっている現状が浮かぶ。
 自宅が半壊以上の場合、応急修理制度か、自治体が所有者に代わって取り壊す公費解体制度のいずれかが利用可能。県が10月末を公費解体完了の目標としてきたことを踏まえ、両制度の申請状況を6市町に尋ねた。
 それによると、全壊・半壊住家約2万2500棟のうち、10月下旬時点で公費解体を申請したのは1万1796棟(全・半壊住家の約52%)、応急修理は5809棟(同約26%)だった。全壊が多かった珠洲、輪島両市では解体の割合が特に高く、半壊が圧倒的に多い七尾市でも、解体が修理を上回った。
 実際に解体を決めた住民に話を聞くと、自己負担のない公費解体と比べ修理に多額の費用がかかることや、「誰も住まない家を子どもに残したくない」といった理由が目立つ。
 県の委託で500件以上の被災家屋活用の相談に当たってきた全国古民家再生協会石川第1支部の東一寛支部長は「直せばまだまだ住める家が解体に回されている」と指摘する。公費解体申請は8月の七尾市を最後に締め切られ、解体を留保することは可能だが、自治体はいつまでも待ってくれない。「悩んだ末に時間切れで解体を決めるケースが増えている」(東支部長)という。
 被災者支援制度に詳しい永野海弁護士は、高齢の被災者が多い能登では自力再建が難しく、消極的な理由で公費解体を選ばざるを得ないケースがあるとし、「被災者がその人らしい生き方を納得して選べるよう、住まい再建に関して総合的に相談支援を行う体制が必要だ」と話した。 
〔写真説明〕公費解体や修理が進む石川県輪島市の黒島地区の住宅=10月30日、同市
〔写真説明〕公費解体中の現場=10月30日、石川県輪島市黒島地区
〔写真説明〕全国古民家再生協会石川第1支部の東一寛支部長=10月17日、金沢市

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