日銀は30日の金融政策決定会合で、政策金利を現行の「0.5%程度」に据え置いた。植田和男総裁は会合後の記者会見で、「(経済・物価の)見通しが実現する確度が少しずつ高まってきている」との認識を表明した。その上で「(来年の)春闘の初動のモメンタム(勢い)がどういう感じになるかもう少し情報を集めたい」と語り、次回12月以降の会合で追加利上げすることの是非を見極めていく姿勢を示した。
政策の現状維持は3月以来、6会合連続となった。会合では9人の政策委員のうち、高田創、田村直樹の両審議委員が現状維持に反対。9月の前回会合に続き政策金利を0.75%程度に引き上げるよう提案したが、反対多数で否決された。
植田氏は、米関税政策の影響について、日米関税交渉合意も念頭に「ダウンサイド(下方)リスクが少し限定されつつあるが、不確実性は継続している」と指摘。企業収益の下押しも懸念される中、「企業の積極的な賃金設定行動が途切れないか、もう少し確認したい」と説明した。
特に来年の春闘に関し労使の交渉姿勢について情報を収集するとし、「最終の妥結の賃金上昇率を知るまで、待ちたいということではない」とも語った。ただ、利上げの判断時期は「予断を持っていない」と明言を避けた。
今回は高市政権発足後初の会合で、政府からは城内実経済財政担当相が出席。植田氏は「常に政府と連絡を密にし十分な意思疎通を図る」と強調した。
〔写真説明〕金融政策決定会合後、記者会見する日銀の植田和男総裁=30日午後、日銀本店

