
高市早苗首相が日銀に対し、政府と経済政策で足並みをそろえるよう求めている。首相は積極的な金融緩和を柱とした安倍政権の経済政策「アベノミクス」の継承を掲げており、追加利上げのタイミングを模索する日銀の判断に影響が及ぶ可能性も否定できない。首相が利上げをけん制すれば円安の進行を招き、輸入物価の押し上げにつながるリスクがある。
「マクロ経済政策の最終的な責任は政府が持つ」。首相は21日の就任記者会見で、政府は日銀の金融政策にも関与すべきだとする持論を改めて強調。現在の物価高はコメなど食料品を中心とした供給不足が主因だと訴え、需要抑制につながる利上げには慎重な考えを示唆した。「日銀が政府と十分に連携を密にして意思疎通を図っていくのが何より大事だ」とも語った。
自民党と連立した日本維新の会も、日銀法改正案を国会に提出したことがある。みずほ証券の丹治倫敦チーフ債券ストラテジストは「維新は日銀の独立性に懐疑的な立場で、政府の金融政策に対する干渉は強まっていくことが連想されやすい」と指摘する。
一方、日銀は9月の金融政策決定会合で、投票権を持つ政策委員9人のうち2人が現状維持に反対し、0.75%への利上げを提案。反対多数で否決されたが、政策変更に向けた議論が深まりつつある。
片山さつき財務相は22日の記者会見で、日銀の金融政策に関し「今の時期に申し上げることはない」と述べるにとどめた。自民党副総裁に就いた麻生太郎元首相も積極緩和を唱える「リフレ派」とは距離を置いており、首相が実際にどこまで日銀の政策運営に口出しするかは不透明だ。
利上げが遠のけば、日米金利差を意識した円売りを招く恐れがある。市場関係者は「金融緩和の継続は円安進行による物価高を促すことになり、経済、金融市場の安定を損ねかねない」(野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト)と警戒している。
〔写真説明〕高市早苗首相=21日、首相官邸