北川進氏にノーベル化学賞=多孔性材料を開発―環境、資源問題に応用

 スウェーデン王立科学アカデミーは8日、2025年のノーベル化学賞を、極小の穴が無数に開いた「金属有機構造体(MOF)」を開発した北川進・京都大特別教授(74)ら3氏に授与すると発表した。MOFは「多孔性配位高分子(PCP)」とも呼ばれ、気体を穴に取り込んで分離、貯蔵することが可能で、環境やエネルギー問題の解決に役立つ新しい材料として期待されている。
 日本人のノーベル賞は6日、生理学・医学賞受賞が決まった坂口志文・大阪大特任教授(74)に続き、米国籍取得者を含め30人目。化学賞は19年、吉野彰・旭化成名誉フェロー(77)が受賞しており6年ぶり9人目となる。
 受賞が決まったのは北川さんのほか、リチャード・ロブソン豪メルボルン大教授(88)と、オマー・ヤギー米カリフォルニア大バークレー校教授(60)。
 ナノサイズ(ナノは10億分の1)の穴を無数に持つ物質は、多孔性材料と呼ばれる。活性炭が代表的で、古くから水の浄化などに使われてきた。天然や人工の鉱物「ゼオライト」は水質浄化や化学産業の触媒などに広く利用されているが、穴の大きさがふぞろいだった。
 北川氏は1997年、金属イオンと有機分子を組み合わせたジャングルジムのような構造のMOFを世界で初めて合成した。MOFはジャングルジムの枠の隙間が均一で、目的に合わせて自由に設計できる。隙間の大きさを変えれば二酸化炭素や酸素など、特定の気体を選んで吸着させることができる。
 MOFを応用すれば、大気中の汚染物質や石油の不純物を効率的に除去したり、次世代エネルギーとして期待される水素や危険なガスを安全に貯蔵して輸送したりすることが可能になる。環境や資源、エネルギー問題の解決に向け、実用化が進められている。
 授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金1100万スウェーデンクローナ(約1億7600万円)が、3等分で贈られる。 
〔写真説明〕記者会見で笑顔を見せる、ノーベル化学賞の受賞が決まった京都大の北川進特別教授=8日午後、京都市左京区
〔写真説明〕ノーベル化学賞を北川進・京都大特別教授らに授与すると発表するスウェーデン王立科学アカデミー関係者ら=8日、ストックホルム(AFP時事)
〔写真説明〕京都大の北川進特別教授のノーベル化学賞受賞が決まり、喜ぶ大学職員=8日午後、京都市

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