
【釜山時事】韓国の李在明大統領は30日、石破茂首相との会談を通じて、日韓関係改善の流れを国内外に印象付けるとともに、日本の次期政権に協力関係が継承されることに期待を示した。約1カ月ぶりの「再会」(高官)の場で、李氏は「有意義な成果を重ねていけば好循環を生み出せる」と強調した。
「今回の会談はシャトル外交の真骨頂と言える。距離の近さもあり、就任100日余りで3回も首相とお会いした」。李氏はこう語り、対話の定期化をアピールした。
会談場所は李氏の要請により、地方活性化の協力を象徴する釜山に設定。人口減少や少子高齢化などの共通課題での日韓当局間の協議体の設置を確認する共同文書が発表された。韓国高官は「(日本の)政権が変わっても取り組むべき問題であり、協力の持続性が期待される」と説明した。
李氏は会談で「(両国が)容易に共感できる社会問題から始め、さらに経済問題を超え、安全保障問題まで共感できる関係を築きたい」と訴えた。目に見える成果を重ね、韓国国民の抵抗感が根強い安保まで協力の幅を広げたい考えを示した。
李氏は8月、米国より先に日本を訪問し、関係重視の姿勢を鮮明にした。背景には、トランプ米政権の関税政策により韓国の輸出産業が打撃を受ける中、「似た立場」にある日本との連携強化が必要との認識がある。
韓国政府は日本が主導する多国間貿易協定「包括的および先進的な環太平洋連携協定(CPTPP)」への加入を検討。李氏は9月11日の記者会見で「経済分野で日本との新たな協力枠組みが必要だ」と呼び掛けた。
トランプ政権は日本車の関税を15%に引き下げたが、韓国車には依然25%の関税を課している。米韓の関税交渉はこう着状態にあり、韓国は先行する日本側からの「助言」(高官)も期待。今回の会談や夕食会でも話題に上った。
韓国側は石破氏退任後の日韓関係に不安も抱える。特に、自民党総裁候補の一人である高市早苗前経済安全保障担当相が討論番組で、島根県の「竹島の日」式典への閣僚出席を主張した点が注目され、韓国の外交専門家は「(次期首相の)歴史認識を巡る言動が韓国世論を刺激すれば、政府は難しい対応を迫られる」と懸念する。
〔写真説明〕30日、韓国の釜山で李在明大統領(右)と握手する石破茂首相(AFP時事)