
韓国の「KF-21」とトルコの「カーン」は戦闘機として現在世界で最も新しい機体です。2機はスペック面、セールス面においてどちらが強いのでしょうか。
初飛行は「1年半差」
韓国の「KF-21」とトルコの「カーン」は戦闘機として現在世界で最も新しい機体です。KF-21は第4.5世代機あるいは4.5プラス、カーンは第5世代機と0.5程度の世代差はあり、推定される性能がまるっきりかぶっているわけではありませんが、共に輸出へ力を入れてもいます。このため、将来は採用国を争う“空中戦”も予測され、「どちらが強い」といった議論が大きくなるかもしれません。
では、それぞれの特徴と強みを比較していましょう。
機体の大きさや重さから言えばカーンがKF-21より一回り大きいですが、両機ともF-16戦闘機を主な更新の対象としています。初飛行した年も近く、KF-21は2022年7月、カーンは2024年2月と約1年半しか異なりません。このため、韓国もトルコも海外セールスへ今以上に力を入れるのは間違いなく、どちらが強いかは世代差があっても関心を呼ぶものと筆者は分析しています。
先述のとおりKF-21は2025年現在、ステルス確保に欠かせない兵器倉を持たないため、第4.5世代、あるいは4.5プラス世代の戦闘機に分類されます。第5世代機のカーンとの世代差のみを捉えれば、一見カーンの方が導入するには“お得”な戦闘機のように見えるかもしれません。
ただし、実際の強さとその機種が広く行き渡るかについては、様々な要素が影響しあいます。
トルコは、2022年12月に初飛行させた「クズマエルマ」無人戦闘機(UCAV)を2026年に軍へ納入するとしています。クズマエルマのステルス性を意識した外観に倣えば、カーンもステルス機としての性能を保持していると見られるほか、全長21m(KF-21は約17m)とされる機体の大きさは、将来の性能発展への余裕を持っていると考えられます。確かにこれを考えれば、カーンが優位と考えることができます。
じゃあ「KF-21」の強みは?
一方、韓国にとって強みなのは、KF-21が2作目の有人戦闘機として生み出されたということです。
同国は練習機からの派生ではあるもののFA50戦闘攻撃機を完成させて輸出にも成功しています。このためFA50を通じ、韓国は最高速度や加速力、航続距離といったカタログで示すことができる以外の、整備性や稼働率の維持、予備部品の補給態勢という使い勝手のノウハウを培い、それをKF-21にも展開するのは確かです。KF-21に一日の長があると見ても差し支えないでしょう。
そのうえ、KF-21は発展型のEXで兵器倉が実装されれば、カーンと並ぶ世代になります。カーンは機体の大きさから機内容積に余裕があり発展性がある反面、使用するエンジンの推力を鑑みれば運動性に秀でているかの議論も予測できます。それゆえに韓国は、“真打ち”のEX登場の日までKF-21の優秀さをアピールし続けるでしょう。
これらを見れば、性能のみでKF-21とカーンの優劣は判じ難くあります。1機当たりの価格もKF-21が日本円にして100億円前後とされる一方、カーンは明らかになっていないので、現時点では“費用対効果”の優劣も判断できません。そうなると、どちらが輸出先に好まれるかは、政治的配慮を含む“付属”サービスの提供になるのではないでしょうか。
トルコがクズマエルマを開発したように、韓国も無人戦闘機の構想を既に示しています。現代はおろか将来の空中戦は機体単体のみならず、無人機や広範囲かつ強力な電子戦環境を作り出したうえで行われます。いわば「総合的なパッケージ」を韓国とトルコのどちらが提供できるかにかかっているでしょう。それだけにKF-21とカーンの競争は、国の総合力が問われるものとなりそうです。