ブラジル、前大統領断罪で国民分断決定的に=米「魔女狩り」主張、関係悪化不可避

 【サンパウロ時事】トランプ米大統領が「魔女狩り」と非難し、世界的な注目を浴びたブラジルのボルソナロ前大統領(70)に対する裁判は、禁錮27年3月の判決が下されてひとまずは幕を閉じた。しかし、右派のボルソナロ被告への支持は根強く、前回大統領選で深まった国民の分断は判決によって決定的となった。さらに、裁判は米国がブラジルへの関税を50%に引き上げるきっかけとなっており、両国関係のさらなる悪化は避けられない情勢だ。
 ボルソナロ被告は2022年10月の大統領選で、左派のルラ現大統領に喫した敗北を覆すため、クーデターを計画した罪などに問われた。連邦最高裁は前大統領を「主犯格」と認定。量刑を主導したモラエス判事は「自らが権力にとどまるために法の支配に背くのは容易という考え」を一掃するために厳罰が必要だと説明した。
 裁判は2月の起訴から判決まで7カ月と、異例の短期間で決着した。来年の大統領選を控え、早期収拾を図ったとみられる。だが、ボルソナロ被告の支持者らは今月7日の独立記念日にも各地で抗議集会を開き、恩赦を要求。主要紙フォリャの8月の世論調査では、同被告の無罪を訴える声が46%に達し、有罪を支持する48%と拮抗(きっこう)した。
 もっとも、最高裁が禁錮刑を言い渡しても、ボルソナロ被告が復権する可能性はゼロではない。ルラ氏は収賄罪で実刑判決を受けて収監も経験したが、後に判決が「そもそも管轄裁判所が違う」という不可解な理由で破棄され、22年の大統領選に出馬する道が開かれた。今回の裁判でも判事の一人は管轄権などを理由に同被告の無罪を支持した。弁護団は裁判継続などを検討しており、最終的な結論は予断を許さない。
 ボルソナロ被告と盟友関係にあるトランプ米大統領は8月、被告の訴追を理由に、ブラジルに課していた一律10%の関税に40%を上乗せした。今回の判決を受け、ルビオ米国務長官は、米国が制裁対象としているモラエス判事による「政治迫害が続いている」と主張。「それ相応の対応を取る」と警告した。ルラ政権も度重なる干渉に不満を隠しておらず、外交的な衝突に発展する可能性が高くなった。 
〔写真説明〕ブラジルのボルソナロ前大統領の支持者らによる集会=7日、サンパウロ(EPA時事)
〔写真説明〕ブラジルのボルソナロ前大統領(右)とトランプ米大統領=2020年3月、米南部フロリダ州(ロイター時事)

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