
【シリコンバレー時事】保守活動家のチャーリー・カーク氏が銃撃された事件を巡って米国社会が揺れている。昨年のトランプ氏暗殺未遂をはじめ、近年政治的暴力が相次ぐ中、若手保守層の代表格として強い発信力を持っていたカーク氏の死は、左右両派の激しい対立を巻き起こしている。
カーク氏は2024年の大統領選でトランプ氏の返り咲きを支えたこともあり、保守層の間では英雄視する動きが広がる。トランプ大統領は11日、01年の同時テロ追悼式典の演説で「彼は自由の擁護者だった」と称賛。演説に先立ち、公共施設などでの半旗掲揚を指示したほか、文民最高位の「大統領自由勲章」授与を発表した。
一方で、カーク氏が銃規制への反対や、性的少数者や人種を巡る差別的な発言で物議を醸してきただけに、批判的な立場から「銃撃は自業自得だ」という趣旨のSNS投稿も目立つ。米メディアによれば、カーク氏自らの言動が事件を招いたと取れる発言をしたとして、米放送局MSNBCが評論家を解雇する騒動も起きた。
これに保守層は反発。ランドー国務副長官はX(旧ツイッター)で、銃撃を正当化するようなSNS投稿をした外国人のビザ(査証)剥奪をほのめかした。極右活動家らは犯行の背景が明らかになる前から公然と「急進左派が事件を起こした」と非難してはばからない。実業家のイーロン・マスク氏もXに「左派は殺人政党だ」と投稿し、波紋を呼んだ。
激しい応酬に対し、オカシオコルテス下院議員(民主党)は、銃規制法案を阻止してきた共和党議員らは「今回の事態で、自ら以外を責める権利などない」と指摘。また、トランプ氏のカーク氏への対応と、今年6月に夫とともに銃撃され死亡したミネソタ州議会議員(民主党)への対応の落差を非難する声も上がっている。
〔写真説明〕10日、米ホワイトハウスで掲揚された半旗(EPA時事)