
沖縄県出身で東京都内の大学に通う上原玲弥さん(21)は、祖母南雲治恵さん(84)と全国戦没者追悼式に初めて参列した。旧海軍所属の曽祖父が魚雷攻撃により太平洋沿岸で戦死した話を祖母らから聞くうちに追悼の思いが募り、参列を決めた。
上原さんは小学生の頃から沖縄戦の「慰霊の日」(6月23日)に合わせて同県糸満市の平和祈念公園を訪れるなどし、戦争と平和について考えてきた。追悼式への参列後、「自分たちは戦争経験者から話を直接聞ける最後の世代。経験者の思いを継承しなければ」と思いを新たにした。
被爆三世の高校2年、岡田武琉さん(16)=広島県廿日市市=は祖父、母と親子三代で参列した。8月6日の広島平和記念式典で誘導のボランティアに参加するなど戦争への関心は持っていたが、曽祖父が戦死していたことは昨年、祖父の家にあった書類を見るまで知らなかった。
旧陸軍所属の曽祖父壱丁田憲さんは29歳だった1945年4月、フィリピン・ルソン島で戦死した。「自分の曽祖父が戦争に行っていたなんて信じられない」と驚いた。
追悼式では「私たちは今、平和に安心して暮らせるが、80年前は学生でも戦争に行っていた」と当時を思いながら黙とうした。式典後、「平和への関心が強くなった。いつか追悼式の青少年献花者を務めたい」と話した。
東京都豊島区の渡辺紘子さん(18)は、戦後80年の節目を踏まえ初参列した。曽祖父武内正さんは旧陸軍兵士で、28歳の時に南太平洋のブーゲンビル島で戦死した。遺骨は戻らず、祖母の自宅には曽祖父が戦地から家族に出したはがきが大切に残されているという。
遺族代表による追悼の辞などは、姿勢を正して真剣に聞き入った渡辺さん。式典を終え、「平和の大切さを感じられた。来てよかった」と表情を和らげたが、今後についての話になると「戦争の悲惨さについて、当事者や遺族と同じ熱量で伝えていきたい」と真剣な表情に戻った。
〔写真説明〕祖母南雲治恵さん(右)と全国戦没者追悼式に出席した上原玲弥さん=15日、東京都千代田区