
現在、初飛行にむけ開発が進められている「ホンダジェット」シリーズの新型モデル「エシュロン」ですが、最新の開発の進捗状況はどうなっているのでしょうか。製造メーカーに聞きました。
現「ホンダジェット」よりデカくなる
ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI、ホンダの米国航空機事業子会社)では、現在ビジネスジェット機である「ホンダジェット」シリーズの新型モデル「ホンダジェット・エシュロン(Honda Jet Echelon)」の開発を進めています。テスト初号機の開発を含めた最新の進捗状況は、どうなっているのしょうか。このたび、HACIに聞くことができました。
2025年2月にテスト初号機の製造が始まった「エシュロン」は、ビジネスジェットとして最も小型のクラス「VLJ(ベリー・ライト・ジェット)」(最大離陸重量が4.54t未満)に分類される「ホンダジェット」を大型化した機体です。現行の「ホンダジェット」は7人乗りですが、一つ上の「LJ(ライト・ジェット)」クラスの「エシュロン」は11人乗りに増え、さらに北米大陸を無給油で横断できる約4860kmの航続距離を備えています。
こうした機体を大きくしシリーズ化を図る手法は旅客機、ビジネスジェット機メーカー問わず一般的で、HACIが航空機メーカーとして一層の足場を固めていることを示しています。
HACIへ問い合わせを出したのは2025年7月初め。約10日後に英文で回答を得て、和訳はすべて筆者(相良静造)の責任において行いました。
回答にまずあった、初飛行の予定と、実際の運航に欠かせないFAA(アメリカ連邦航空局)の型式証明と呼ばれる認可の取得は、前者が2026年、後者が2028年の目標に変わりありませんでした。これは、テスト初号機の製造が計画通りに進んでいることを示しているといえます。
売れ行きなどはどうなの?
また、HACIからの回答には「ノース・カロライナ州グリーンズボロ工場で現在、主翼の組立が進められている。その他の主要な部品も工場へ到着しているほか、加工や製造など部品供給網の様々な段階で作業中」とも記されていました。
売れ行きの状況はどうでしょう。回答時点での「エシェロン」の正式な受注数は確定していないものの、約500件のLOI(購入意向表明書)を得ているとしています。この数字は2025年3月の問い合わせ時と同じですが、これは、チャーター会社や航空機リース会社といったビジネスジェット機にとっての大口ユーザーは、航空会社が行う旅客機の一括発注のような機会は少ない傾向のためと推測できます。
もっとも、HACIはエシュロンと同じクラスのビジネスジェット機より20%削減を目指す燃費を挙げ、「既存のホンダジェットより大型の機種を使っていたユーザーからも関心が寄せられている」としているため、LOIは今後伸びていくことが考えられます。
なお、HACIの今回の回答は、既存の「ホンダジェット」と「エシュロン」との相互運用性の確保にも触れています。これにより「ユーザーがより遠距離へ飛び、より多くの乗客を乗せたいと考えた際に、新型機『エシュロン』への移行は多くのメリットがある」と回答はしています。
これはチャーター会社にとっては、大きさ別に異なるメーカーの機体を導入するのではなく、サイズの異なる同一シリーズの派生型のモデルを揃えることで、機種移行訓練や整備費の低減が期待できます。これは、HACIが「エシュロン」を売り込む際のセールス・ポイントとなるでしょう。
ジャンルを問わずメーカーにとってヒット商品が出たり販売が軌道に乗ったりした際は、「次」の製品開発へ移らなければ継続的な利益を望むことはできません。HACIにとって新たなステップアップの担い役が、この「エシュロン」になりそうです。それだけに、FAAの型式証明取得までをいかに予定通り進めるかが、今後への鍵になるでしょう。