
すでにアメリカのスペースXなども試験中のシステムです。
ロケットの洋上回収システムを備えた無人船を開発へ
日本郵船は2025年7月24日、再使用型ロケットの洋上回収システムについて同日付で日本海事協会(ClassNK)から全体システム構成のコンセプト承認(AiP)を取得したと発表しました。
これはJAXA(宇宙航空研究開発機構)が進める宇宙戦略基金事業に基づくもので、三菱重工をはじめとするプロジェクトパートナーとの議論を経た結果だとしています。なお、船舶を含む宇宙開発関連のシステムに対する、ClassNKからのAiP取得は初です。
ロケットは、燃料と酸化剤を燃焼することで推進力を得て打ち上げられますが、上段を分離したロケットの下段部(1段目)は宇宙に向かいません。一方、従来はほぼ使い捨てで、洋上や地面に落下していました。
そこで、この1段目に洋上回収船の位置を正確に把握し、自動で着地させる機能を搭載しようと現在、研究が進められています。
日本郵船が進める洋上回収システムは、ロケットの1段目が着地する回収船と回収プロセスを支援する司令船の2隻で構成されます。落下地点には、回収船が待機しており、落下してくるロケットの1段目の着地地点としての役割を果たします。
回収船にはDPS(ダイナミック・ポジショニング・システム)が搭載されており、潮流の影響などを考慮しながら、特定の位置に正確に留まることが可能です。回収船はロケット回収時には完全な無人化での運用が想定されており、ロケットは回収船上に着地した後、安全に固定化されます。ロケット着地後には司令船が回収船と連携しながら安全に運搬を行い、港へと帰ります。
日本は、国土面積が限られた海洋国家であり、安全かつ効率的なロケット回収に関しては、洋上で行う方が向いているとのこと。そのようななかで、我が国の宇宙技術戦略においてもロケットの洋上回収技術が非常に重要と位置付けられています。
これを受け、日本郵船は海事分野の豊富な知見を生かし、三菱重工と連携しながら再使用型ロケットの洋上回収システムの研究開発および事業化に取り組んでいます。
なお、世界を見渡すと、すでにアメリカのブルーオリジン社は2018年、貨物船「Stena Freighter」を購入し、改造することでロケットブースターの着陸用プラットフォーム「ジャクリーン」を誕生させています(2022年に退役)。またスペースX社も「ASDS(自律型宇宙港ドローン船)」と呼ばれる自律型のロケット回収無人船を開発し、2015年以降試験を実施しています。
日本郵船や三菱重工が進める再使用型ロケットの洋上回収システムは、これらに近しいものといえるでしょう。