東欧で権威主義増長=歯止めの米国、関与停止

 【ベルリン時事】東欧で強権的な指導者らが、意に沿わない政治・社会活動への弾圧を強めている。トランプ米大統領が、民主主義や人権の推進に向けて他国に関与する従来の米国の外交方針を曲げたことで、権威主義の増長に歯止めがかかりにくくなっているためだ。米国からの援助が途絶えた団体は「米国の敵にとって、巨大な贈り物だ」と危機感を募らせている。
 ハンガリー議会は3月、LGBTなど性的少数者の権利擁護を訴える恒例のパレードを禁じ、参加者に罰金を科せるようにする法案を可決。今月14日には、性別を出生時の生物学的な性に限る憲法改正を承認した。
 主導したのは、自国の利益最優先の姿勢が他の欧州諸国とあつれきを生んできたオルバン首相だ。性的な少数派を標的にするような対応について、オルバン氏は、これまでは米欧からの逆風に阻まれてきたが、「ワシントンの風が変わった」ため実現したと主張。トランプ政権の存在が後押しになっているとの認識を示した。
 東欧は冷戦後に民主化が進んだが、近年は権威主義勢力の台頭が目立っている。民主主義を強化する取り組みは米国の対外援助に支えられてきたが、トランプ政権は政府効率化を掲げ、他国を援助する政府機関、国際開発局(USAID)の「解体」に着手した。
 米政権はUSAIDを「犯罪組織」と決め付け、セルビアでは2月、これを根拠に警察が援助を受けていた市民団体などの事務所を捜索した。団体側は長年実権を握るブチッチ大統領の政治腐敗を糾弾しており、「権威主義体制の力を誇示するための無意味な圧力だ」と反発した。
 かつて共産圏の市民に西側の情報を伝える役割を担い、現在もロシアのプロパガンダと対峙(たいじ)している米政府系放送局「ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティー(RFE/RL)」(チェコ本部)も、トランプ政権の削減対象となり、経営危機に直面している。ロシア語サービスの記者は独メディアに対し「信頼できるニュース源が失われる」と東欧でロシアの影響が強まることに懸念を示した。 
〔写真説明〕LGBTなど性的少数者の権利擁護を訴えるパレード(手前)と、パレードに反対するデモ隊=2021年7月、ブダペスト(AFP時事)

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