知られざる日本代表たち「士官候補生のオリンピック」ご存じか? 国の威信かけたガチ勝負 まもなくスタート!(前編)

「士官候補生のオリンピック」と呼ばれる国際的な交流競技会、「サンドハースト競技会」が2025年5月頭にアメリカで始まります。日本からは防衛大学校の学生が参加します。出国直前の彼らを取材してきました。

50年以上前から行われている歴史ある競技会

 突然ですが、みなさんは「サンドハースト競技会」をご存知でしょうか。

 日本人も多数参加しているのに、国内ではほとんど報じられることがない同競技会、じつは選手には一定の縛りがあります。それは、「国軍の士官候補生」であること。なので、日本人として参加するのは、自衛隊の幹部を目指す防衛大学校の学生に限られます。

 このたび、サンドハースト競技会に参加予定の防大生らの直前訓練を取材することができたので、そのリポートを前後編の2回にわたってお届けします。

 防衛大学校の説明によると、そもそもサンドハースト競技会とは、「アメリカ陸軍士官学校にて行われる、各国の士官学校による威信を懸けた総合戦技競技会」のことなのだとか。

 なんだか難しそうなイメージですが、別名「士官候補生のオリンピック」とも呼ばれるこの競技は、その名にふさわしい過酷な種目が盛りだくさん。将来の自衛隊幹部となる防衛大学校の学生たちは、毎年アメリカで行われるこの競技会に参加し(コロナ禍を除く)、規律心や切磋琢磨の気風、相互信頼を経て、幅広い国際関係の醸成を目指します。

 サンドハースト競技会は米東海岸ニューヨーク州にあるウエストポイント陸軍士官学校の広大な演習場で行われます。名称は、英国サンドハースト王立陸軍士官学校にちなんでおり、その由来は1967年にサンドハースト王立陸軍士官学校からウエストポイント陸軍士官学校にイギリス軍将校の剣を贈呈し、競技会の賞品として使用したことが始まりです。

 現在では招待国も含めた15か国の士官候補生、全48チームが2日間で30マイル(約48km)もの距離を、さまざまなミッションを攻略しながら踏破していきます。

体力だけじゃなく、チームの一体感も必須

 サンドハースト競技会の種目は、約15kgもの背嚢を背負って長距離を移動するラックマーチや、さまざまな種類の銃の部品が散らばった状態からスタートする銃の分解結合、戦闘中に発生した負傷者を敵を撃退しつつ安全なところまで移動させる第一線救護などです。ほかにも通信や手榴弾の投擲、射撃や夜間地図判読などバラエティに富んでおり、各チーム知恵と体力を振り絞ってゴールを目指します。

 防衛大学校では、まず前年9月から募集を開始し、50名もの応募者から、翌年2月までに素養調査、そして一次と二次、2回の選考を行ったのち、補欠者を含む13名の精鋭チームを結成します。そこからおよそ2か月の訓練期間を経て、毎年4月末に米本土ウエストポイントへ向け出国します。基本理念の中には「我々は、仲間を決して見捨てずに、飽くまで強くあるべく努力する」という項目があり、訓練の取材中も熱いパートナーシップを何度も目撃しました。

 見ているこちらまで思わず熱くなってしまうほど、気迫のぶつかり合いを感じる「サンドハースト」。ただでさえ厳しい防大生活、それに加えて同競技会向けの過酷すぎる訓練が追加されるというのに50名もの応募があるあたり、その人気が伺えるのではないでしょうか。

 防衛大学校の熱い競技といえば開校祭の棒倒しが有名ですが、「サンドハースト」はまた別の側面を持つ熱い青春のイチ競技だと言えるのかもしれません。だからこそ、私(たいらさおり:漫画家/デザイナー)としては、こちらにもぜひ注目して欲しいです。

 後編では、いよいよそのハードすぎる訓練の一部をお届けします。

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