ヘリ+飛行機=そのまんま!? 半世紀前に作られた「オスプレイ的な何か」の顛末

自衛隊も運用を始めた「オスプレイ」は、ヘリコプターのように垂直離着陸が可能で飛行機のように高速で移動できます。しかし、いまから半世紀以上前、イギリスで同様の乗りものが開発されていました。

ローターの先端からガスを噴射して飛びます

 産業革命発祥の国、イギリス。このような工業先進国としての背景もあって、同国は世界を驚かせる画期的な航空機をいくつも生み出してきました。

 ただ、そのラインナップは成功作と失敗作が入り混じり、ハッキリ言えば「玉石混交」でした。成功作の代表例としては、世界初の垂直離着陸ジェット戦闘機「ハリアー」ですが、知られざる失敗作もあまた存在します。そのなかでも「惜しい」といえるのが、垂直離陸旅客機フェアリー「ロートダイン」でしょう。

「ロートダイン」が企画されたのは、第2次世界大戦が終わった後の1950年代前半です。この頃は、まだヘリコプター用の大出力エンジンとギア・ボックスなどの周辺機材が完成しておらず、そのようななかで多数の乗客を乗せて垂直離着陸ができ、ヘリコプターよりも速く飛行できる航空機は、過密化する大都市の新たな移動手段として、検討されるようになりました。

 その構造は、まさしく固定翼の飛行機と、回転翼のヘリコプターを足して2で割ったもので、乗員と乗客が乗る胴体の左右に主翼があり、そこにプロペラ駆動のターボプロップ・エンジンが1基ずつ、計2基取り付けられています。そしてこのエンジンの出力は、前進用のプロペラを回すだけでなく、クラッチで機内に搭載されたコンプレッサーを回すこともできるようになっています。

 一方、胴体中央の直上に巨大な4翅のローター・ブレードが載せられており、各ブレードの先端部には、ローターの回転方向とは逆向きの小さな噴射装置が設けられています。

 離陸時は、主翼に設置されたターボプロップ・エンジンの出力で機内のコンプレッサーを回して圧縮空気を造り、それに燃料を混ぜて燃焼させ、ブレード先端の噴射装置から燃焼ガスを噴き出してローターを回転させることで、垂直上昇します。

 この方式の長所は、エンジンでローターを回すわけではないのでトルクが生じず、テールローターが不要な点です。実際、「ロートダイン」にはテールローターはなく、水平尾翼と垂直尾翼が取り付けられています。

テスト飛行は事故ゼロで良好 しかし開発中止に

 離陸後は、主翼で揚力を得てプロペラ2基の推進力で前進する一方、燃焼圧縮空気が噴射されていないローターは、オートジャイロのそれと同様に、前進時の前からの風を受けて回転し、補助の揚力を生み出す役を果たします。

 このように、見た目は飛行機とヘリコプターの合わせ技でしたが、構造的にはかなり独自性の強いものでした。

 乗員2名、乗客48名のロートダインは1機が試作されて、1957(昭和32)年11月6日に初飛行し、その後の試験で最高速度は約320km/hを発揮しました。しかも試験飛行で事故が生じたことは1度もなかったと伝えられます。

 このように、開発がスムーズに進んでほぼ実用段階に達していたロートダインでしたが、本機が試作されていた時期は、イギリス航空業界のメーカー再編や同国の経済的問題、政治的問題などで国内情勢がごたごたもしており、こうした影響から、1962(昭和37)年に本機の開発は中止となりました。

 一部では、燃焼圧縮空気の噴射音が騒音としてすさまじいうえ、コストパフォーマンスも固定翼機(飛行機)と比べて悪く、それらが開発中止の遠因になったと言われています。もちろん、その面も否めないでしょうが、前述したように開発中は技術上の大きな問題が生じていなかったため、一時はイギリス空軍が12機の発注も検討したことがありました。

 もしロートダインが量産されていたら、ヘリコプターとは異なる垂直離着陸機として活躍し、発展型の新モデルが登場するなどして「オスプレイ」以上に進化していたかもしれません。

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