
クルマを運転中「ありがとう」の意を込めてハザードで挨拶する行為。しばしば目にする光景ですが、厳密にはルール違反です。さらに近年は「反ハザード挨拶」派も増えているのだとか。
「ハザード」とはいうけれど…
天変地異が増えた頃から、各地で「ハザードマップ」というものが浸透するようになりました。筆者はこの名を初めて耳にした際、「点滅する地図……いったいどういう意味だろう」とアホ丸出しの感想を抱きましたが、そもそも「ハザード」とは「危険・脅威・危害要因・災害」といった意味であり、何も「点滅する」という意味ではありません。
クルマのハザードも、本来は周囲へ危険を知らせる時に使用するもので、正式名称は「非常点滅表示灯(ハザード)」です。故障時などやむを得ない場合の路上駐車、クルマがけん引される際などに使用します。
この使用目的を逸脱して、合流時などの「サンキューハザード」に見られるように、「ありがとう」とお礼を示すためにハザードを用いるのは、ルール違反と見る向きもあるでしょう。ハザードは、道路交通法に具体的な使用方法が記載されていない一方、条文には以下のような記述があります。
「第18条第2項」
自動車(自動二輪車及び小型特殊自動車を除く)は、法第52条第1項前段の規定により、夜間、道路(歩道又は路側帯と車道の区別のある道路においては、車道)の幅員が5.5メートル以上の道路に停車し、又は駐車しているときは、車両の保安基準に関する規定により設けられる「非常点滅表示灯(ハザード)」、駐車灯又は尾灯をつけなければならない。
「第26条の3 第3項」
通学学園バスは、小学校等の児童、生徒又は幼児の乗降のため停車しているときは、車両の保安基準に関する規定に定める「非常点滅表示灯(ハザード)」をつけなければならない。
以上よりハザードは、通常の運転時に、無闇やたらに使うべきではないものだということがわかります。
「ハザード挨拶」するドライバー7割超え
現状、挨拶のためにハザードを使う人は多く、JAF(日本自動車連盟)の調べでは「埼玉県のドライバーの91.3%が『サンキューハザード』をする」とのこと。逆に交通量の少ない北海道では「『サンキューハザード』をするドライバーが76.7%ほどに留まる」とし、「特に交通量が多い地域で使われる傾向がある」と結論付けています。
とはいえ交通量の少ない地域でも、7割超えのドライバーが「ハザード挨拶」をするほど浸透していることもあり、現状では取り立てて違反対象とされることはまずありません。
ただし、厳密には正しい使い方ではないため、「挨拶ハザード」によって事故や危険を誘発した場合は違反対象になる可能性があり、こういった点からも専門家のあいだでは「無闇にハザードを使うことは控えたほうが良い」「それが本来のハザードだ」とする声も多く上がっています。
一部ドライバーのあいだで広がる「反ハザード挨拶」
また、一部ドライバーの間でも「反ハザード挨拶」の声が聞かれます。主な意見は以下の通りです。
「『ハザードでお礼を伝えれば良いでしょ』みたいな感じで、容赦なく割り込んでくるドライバーがいる」
「ほかのドライバーに対し、駐車するのかお礼なのか混乱させる」
「通常運転中に、運転操作にスキを生むことは危険度を上げることになる」
「そもそもの交通ルールに反している」
「ハザード挨拶」肯定派の筆者はこういった正論を前に、「そ、そうですよね……」と折れてしまいそうではありますが、「ハザード挨拶アリ・ナシ」問題は、警察や専門家も含めてさらに議論を重ねつつ、一定の推奨マナーやルールを設けたほうが良いようにも思う次第です。