ソ連のT-34&KV強すぎ!! 対する「戦車大国」ドイツが造った間に合わせ兵器とは 実は“陰の立役者”かも

「タイガー」「キングタイガー」「パンサー」など名だたる戦車をいくつも開発したドイツは、戦車大国のイメージが強いかもしれませんが、第2次大戦では強力なソ連戦車に悩まされたことも。それを救ったのは急ごしらえの対戦車車両でした。

ソ連の2大戦車T-34とKVの登場

 機甲部隊を重視していたドイツは第2次世界大戦中、戦車以外にもさまざまな装甲戦闘車両を開発しましたが、力を入れたもののひとつが対戦車自走砲で、その代表的車種が「マルダー」シリーズです。

 愛称の「マルダー」とはドイツ語で貂(テン)のことで、小さいながらも俊敏でネズミやリス、鳥類を捕食するこの肉食獣にあやかったネーミングだといえるでしょう。この「小さな殺し屋」マルダーには、いくつかの型式がありました。

 そもそも、ドイツ陸軍は、戦前から機甲部隊の拡充に力を入れていました。これは当時の指導者、ヒトラーの肝いりでもあり、1939年9月に第2次世界大戦が勃発すると、ドイツ機甲部隊は「新しいタイプの機動戦力」として敵国の席捲に大活躍します。

 ところが1941年6月にソ連(現ロシア)へと侵攻すると、ドイツ軍は衝撃の事態に遭遇しました。当時、ソ連軍が配備を始めていた新型戦車であるT-34とKVともに、その頃のドイツ軍では最強の戦車だったIV号戦車(短砲身型)より優れていたのです。この出来事は「T-34ショック」または「KVショック」とも呼ばれるほどで、ともすると危機的状況になりかねないものでしたが、歴戦のドイツ戦車兵たちは、熟練の技量でドイツ戦車の性能不足をカバーし、戦いを有利に進めました。

 とはいえ、この性能格差は急いで解消すべき問題であることには変わりありません。こうして、ドイツ軍で対T-34、対KVの動きが始まります。しかし新型の対戦車砲(戦車砲)や新型の戦車は、そう簡単には造れません。そこで、ある緊急措置が講じられました。

強敵ソ連戦車を倒すためにソ連の大砲を使っちゃえ!

 それは、独ソ戦の初期に大量鹵獲したソ連製の76.2mm野砲M1936 F-22を、ドイツ軍が再使用するというものでした。1200門以上の多数が鹵獲されていた同砲は、初速が速く対戦車砲として十分に通用する性能を持っていました。

 事実、F-22は鹵獲当初から性能的に「使える」砲だったので、ドイツ軍は「7.62cmFK296(r)」の鹵獲兵器番号を付与してそのまま使用していました。なお、番号の末尾に付けられた(r)は、ソ連(ロシア)から鹵獲したことを示しています。

 ドイツ軍は、国産の次世代対戦車砲7.5cmPaK40が配備されるまでのつなぎとして、この7.62cmFK296(r)に、対戦車砲として使いやすくするための改造を施していました。最大のポイントは、鹵獲したソ連製弾薬がなくなっても使用が続けられるとともに威力の向上をはかる目的で、ドイツ製Pak40対戦車砲の薬莢を使えるよう薬室が拡張され、Pak40の砲弾に銅製バンドを巻いて7.62cmのF-22から撃てるようにした専用弾薬まで生産されたことでした。

 こうして大改造を施された鹵獲兵器7.62cmFK296(r)には、新たに「7.62cmPaK36(r)」の鹵獲兵器番号が与えられましたが、ドイツ軍将兵は「ロシアンパック」のあだ名で呼ぶことも多かったようです。

 当初、7.62cmPaK36(r)は牽引式の対戦車砲として使用されましたが、ドイツ軍は、本砲を載せた対戦車自走砲をいくつか開発しました。そのひとつがSd.Kfz.139「マルダーIII」です。

 ドイツは1938年にチェコを無血併合した際、同国のCKD社が開発した戦車LTvz.38の生産を続けさせ、「38(t)戦車」として採用したのですが、独ソ戦が始まると性能不足が露呈するようになり、前線から徐々に引き揚げられました。そこで旧式化した38(t)を再利用すべく砲塔を撤去。その部分に開放式の戦闘室を設けて7.62cmPaK36(r)を搭載したのです。

第2次大戦の最後まで現役だった「マルダー」シリーズ

 この38(t)の車体を利用した対戦車自走砲としては、ドイツ製の7.5cmPaK40を搭載したSd.Kfz.138「マルダーIII H」やSd.Kfz.138「マルダーIII M」もありました。ただ、両者は戦闘室の外観が異なるので識別は容易です。

 このように、「マルダーIII」シリーズはソ連のT-34やKVといった強力な戦車に対抗するための応急かつ合理的な再利用車両といった意味合いが強いものでした。ただ、ドイツは「マルダーIII」シリーズの前にも、フランス軍から鹵獲したロレーヌ37L装甲牽引輸送車に開放式の戦闘室を設けて、7.5cm対戦車砲PaK40を搭載した「マルダーI」を170両製造しています。

 また38(t)戦車と同じく、威力不足となった自国製のII号戦車にも似たような改造を施し、対戦車自走砲(時に「マルダーII」と呼ばれることもある)として有効活用しています。

「マルダー」シリーズは、鹵獲した砲を鹵獲した車体に載せたり、旧式化した車体にドイツ製対戦車砲を載せて自走砲に転用したりした、一連の軍用装軌車に与えられています。ただ、その誕生はきわめて応急ながらも、T-34やKVといった強力な敵戦車を撃破できる頼りになる対戦車車両として、相応の役割を果たしました。

 なお、ドイツは第2次世界大戦の開戦前から戦争終結まで常に戦車不足に悩まされ続けていました。そう考えると、「マルダー」シリーズのような戦闘車両こそ「世界に冠たるドイツ装甲部隊」の実態を端的に示す「代名詞的存在」といえなくもないでしょう。

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