
ホンダの「認定中古車」ならぬ「ホンダジェット」のメーカー認定の中古機が、実績を挙げつつあります。「認定中古機」はどのようなメリットがあり、なぜ航空機メーカーがわざわざ中古機を販売するのでしょうか。
「認定中古車」のノウハウを活用
ホンダの「認定中古車」ならぬ「ホンダジェット」のメーカー認定の中古機が、米国ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)で実績を挙げつつあります。「認定中古機」はどのようなメリットがあり、なぜ航空機メーカーがわざわざ中古機を販売するのでしょうか。
よく自動車では「認定中古車」とよばれるものがありますが、それをインターネットで検索すると、「査定専門の第三者機関の点検により品質を保証した中古車」「ディーラーの販売により品質が保証された中古車」と出て、すぐ後に自動車メーカーの認定中古車公式サイトも表示されます。
HACIの公式サイトにも同じように、ホンダジェットの認定中古機が紹介されています。
HACIが認定中古機の販売を始めたのは2023年6月で、2025年3月上旬までに5機を販売しています。認定中古機についてHCAIへ認定中古車との違いを聞いたところ、「基本的なメリットは自動車と類似している」とのことで、販売には「ホンダの認定中古車取扱いの実績も参考にしている」と回答がありました。
その一方で、「自動車と航空機の販売手法は違いがある」とも。細かなポイントは聞けませんでしたが、航空業界の販売方法は元々どんな形が一般的か、それとの違いを把握しつつ最適な手法を確立するよう調整している、とのことでした。
元々、航空機は客室の内装、さらに航法用電子機器などの搭載パターンは、購入者の予算や使用頻度から多岐に渡ります。こうした航空機特有の事情を踏まえながら、現状の同社は認定中古車での経験を活用していかにこの事業の実績を上げるかを、販売を重ねつつ、経験を蓄積している時期でもあると筆者は感じました。
なぜホンダは「中古の民間機」を売るのか
では、なぜHACIは認定中古機事業に参入したのでしょうか。
筆者は「ホンダジェット」の販売数の増加が背景にあると考えます。初号機が顧客へ引き渡されたのは2015年以降で、これまでに250機以上が販売されました。販売から10年近くが経過し、ユーザーによっては、クルマを乗り換えるように、ビジネスジェットを“買い替え”てもおかしくない時期に差し掛かっているといえるでしょう。
そのようななか、HACIが古い機体を買い戻し、認定中古機として新たなオーナーに渡れば、「ホンダジェット」の品質もアピールできます。なお、買い戻した「ホンダジェット」を実際に「認定中古機」とするには、購入前検査と称して機体の208か所以上に異常や不具合がないか確認し、これに合格する必要があります。
2025年3月現在、HACIの公式サイトには点検に合格した3機の認定中古機が掲載されています。3機の着陸回数は61~870回、飛行時間は81~730時間と差がありますが、これはビジネスジェット機らしく前オーナーの使い方に違いがあったためです。
なお、認定中古機も走行距離の短い自動車のように飛行時間の短い機体の方が人気もあるということで、HACIは累積飛行距離の少ない機体の品揃えも重視しているとしています。
また、こうした認定中古機は既に旅客機でも始まっています。ANA(全日空)が2025年以降に追加導入する7機のプロペラ機DHC8-Q400は、いずれもデ・ハビランド・カナダ社の責任の下、整備・改修が実施されて引き渡される認定中古機です。
認定中古機は、メーカーにとっても品質を長くアピールする機会となりますし、ユーザーにとっても導入コストを抑えながら、良質な機体を手に入れることにつながります。それゆえに今後は認定中古機と銘打った販売が増えるかもしれません。