もはや別物やん! 進化の最終形態は「亜音速ジェット機」イギリスを救った戦闘機の知られざる“その後”

イギリス人なら知らない人はいないといっても過言ではない戦闘機、それが「スピットファイア」です。同機は第二次大戦勃発前に登場し、大戦の全期間にわたって用いられたのち、戦後はなんとジェット戦闘機にまで進化していました。

イギリスを救った戦闘機

 第二次世界大戦において、イギリスを象徴する戦闘機のひとつであるスーパーマリン社製「スピットファイア」は、英国民にとって特別な存在です。その名が歴史に刻まれた最大の理由は、1940年の「バトル・オブ・ブリテン」における活躍にあります。

 この戦いにおいて、スピットファイアは優れた飛行性能と操縦性を活かし、ドイツ空軍の猛攻を凌ぎ、本土防空の要として大きく貢献しました。その洗練されたフォルムと卓越した性能から、スピットファイアは「国を救った戦闘機」として広く認知されており、日本における「ゼロ戦(零式艦上戦闘機)」と同等の知名度を誇るといっても過言ではないでしょう。

 一方で、スピットファイアは異例なほど多くの派生型を持つ戦闘機としても知られています。その基本的な発展系だけを見ても、戦前に開発された初期型のMk.Iから、戦後に完成したMk.24まで存在し、その間にエンジン出力は1030馬力から2120馬力へと倍増、最高速度も582km/hから731km/hへと大きく向上を遂げました。その進化は、もはや別の戦闘機と言っても差し支えありません。

 さらに、スピットファイアはレシプロ戦闘機の枠を超え、亜音速ジェット戦闘機へと進化を遂げるという異例の変遷を辿っています。

 ジェット機型スピットファイアのベースになったのは、後期型のスピットファイアMk.XIV(Mk.14)をベースに主翼をテーパー型の層流翼へ換装し、さらなる高性能を追求した派生型「スパイトフル」です。

 スパイトフルは、スピットファイアの究極形とも言える機体であり、最高速度770km/hという、レシプロ機として理論的限界に近い数値を記録します。しかし、この機体が量産に移行したのはドイツの降伏とほぼ同時期であったため、戦場でその高性能を発揮する機会は与えられませんでした。

 大戦が終結すると、航空技術は急速にジェット機の時代へと移行します。そこで、イギリスはこの潮流に乗り、スパイトフルの主翼設計を流用し、ジェット推進化した「ジェットスパイトフル」を開発します。こうして生まれた新型機は「アタッカー」と命名。同機は最高速度950km/hを達成し、レシプロ機とは一線を画す速度性能を実現すると、イギリス海軍に採用され、艦載戦闘機として一定の成功を収めました。

亜音速飛行可能な「スピットファイア」の末裔

 しかし、スピットファイアの系譜はまだ続きます。航空技術の発展により後退翼の適用が可能となると、アタッカーを原型とした性能向上型が開発されることとなりました。それが、スピットファイアの系譜の最終形となる「スウィフト」です。

 この機体はもはや原型のスピットファイアの面影を完全に失っていますが、最高速度1187km/h(マッハ0.96)を記録し、音速の壁に迫る能力を持つに至っています。なお、スウィフトは空力的な問題を抱えていたことで事故が続発。欠陥機と見なされたものの、イギリス空軍は本機を採用し、実戦配備しています。

 さらに、スウィフトを基にした超音速飛行対応型の計画も存在し、新しい「エリアルール」を適用することで超音速飛行を実現しようとする試みもなされましたが、こちらは実現には至りませんでした。

 他国に目を転じると、レシプロ戦闘機をベースとしたジェット戦闘機の開発例は、ソ連のYak-15(Yak-3原型)やアメリカのFJ-1「フューリー」(P-51原型)などがあります。しかし、これらは第二次世界大戦中に初飛行した比較的新しい設計の機体であるのに対し、スピットファイアの初飛行は1936年と、大戦勃発よりさらに3年前に遡ります。これは、戦闘機の設計が低翼単葉・引き込み脚といった第二次世界大戦世代のスタンダードに移行し始めた黎明期に誕生した機体であったことを意味します。

 このように、基本設計が古いスピットファイアが、その枠組みを超えてジェット化され、さらには音速の壁に迫るほど進化したことは、レシプロ戦闘機の歴史においても極めて稀有な事例であると言えるでしょう。

 世界大戦と航空機の飛躍的進化という激変する環境の中で、技術革新の波に乗りながら進化を続けたスピットファイアの系譜は、航空史の視点からも特筆すべきものだといえるのではないでしょうか。

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