
首都圏のなかでも、千葉県の渋滞はとりわけ慢性的。湾岸エリアに内陸エリア、さらに場合によっては極めて深刻なアクアラインエリア……どうしてここまで千葉は混雑するのでしょうか。
千葉の渋滞はホントに辛い!
首都圏でクルマを運転する人で「千葉県の道路はいつも混雑している」と思っている人は多いのではないでしょうか。東京都や神奈川県、埼玉県でも渋滞はありますが、その多くは局所的な渋滞がほとんどです。それに対し千葉県内は、一定のエリアで、つまり“面的”な渋滞が発生しがちなのです。
なぜ千葉県では、そうした混雑が発生するのでしょうか。その理由を、混雑がめだつエリアごとに考察してみましょう。
「一般道+高速」×2ルートがあるのに全然足りない「湾岸エリア」
まず多くの人がイメージする「千葉県内の渋滞の名所」は、浦安市から市川市、船橋市、千葉市へとつながる湾岸エリア一帯です。
ここには京葉道路および首都高湾岸線からつながる東関東自動車道(東関道)という2本の高規格道路が通っています。さらに国道357号が首都高湾岸線沿いを、国道14号が京葉道路に、それぞれほぼ並行して走っています。
このように同じ方向に4本の高規格道路、国道が整備されていれば、交通容量は十分と思われがちです。しかし深夜や早朝を除き、このエリアから渋滞が消えることはありません。その主な理由は、これら道路を取り巻く環境です。
そもそも国道14号より北側には東西方向を結ぶ道路が乏しいこと、また国道357号のすぐ南側は東京湾であることから、東京都と千葉県を行き来する東西の交通が、この狭いエリアに集中しています。さらに、これらの沿道は高度に発展した市街地と工業地帯です。
国道14号は生活道路としての側面も色濃く残った昔ながらの片側1車線主体の狭い道です。国道357号沿いにはさまざまな規模の工場の間に大型のショッピングセンターが建ち並び、それらの施設に出入りする一般車やトラックが、昼夜を問わず走っています。
そのため、どちらの国道も平均速度が非常に低く、また交差点のたびに複数回の信号待ちをともなうことも珍しくありません。
抜本的な解決は「もう1本」作るしか?
さらにこうした一般道の渋滞を避けるため、短い区間であっても京葉道路および首都高湾岸線~東関道を利用するクルマが多いことが、これら高規格道路を混雑させる原因となっています。
現在、国道357号は各所で交差点の立体交差化が進められ、一部は供用されていますが、その効果はまだ限定的と言えます。このエリアの渋滞を根本的に解決するには、国道357号の交差点をすべて立体交差化することに加え、構想中の新湾岸道路(第二湾岸道路)の開通を待つしかないでしょう。
行けども行けども渋滞!「船橋・鎌ヶ谷・八千代エリア」
続いて、多くのドライバーが頭を抱えるのが、船橋市内陸部の北東から東、国道16号までの鎌ケ谷市や八千代市を含む広いエリアです。
このエリアの弱点はずばり、「真っ当な広い道がないこと」に尽きます。
西の(外環道沿いの)国道298号、東の国道16号に挟まれた地域で南北に走る主要道路は県道8号(船取県道)のみ、東西方向は県道59号(木下街道)、国道296号(成田街道)のみです。しかもこれらの道路は多くの区間が片側1車線で、かつ市街地を通るため、通過交通と地域交通が交錯し、日中はノロノロ運転が常態化しています。
通過交通がこのエリアを迂回しようと思っても、北はバイパスが一部未完成の国道464号、南は京葉道路から宮野木JCTを経由して国道16号という大回りルートとなるため、時間短縮は限定的で、積極的な利用にはつながりにくい状況です。
このエリアの混雑解消の有効打は、外環道から成田空港まで延びる計画の国道464号「北千葉道路」、国道296号バイパスの整備、県道8号の拡幅ですが、事業化されていない区間もあるため、まだ長い時間がかかりそうです。
休日にスゴイ渋滞! 木更津「アクアラインの下」
最後は、曜日や時間帯によって想像を絶する渋滞となる、木更津市の「東京湾アクアライン連絡道(以下、アクア連絡道)」高架下の国道409号と、千葉県道87号の交差点周辺エリアです。
その渋滞の理由は、近隣の大規模商業施設の存在と、渋滞を生みやすい道路の構造、そして迂回しにくい地理的要因です。
一般道から「東京湾アクアライン(以下、アクアライン)」の川崎方面に入る木更津金田ICでは、本線料金所通過直後の車列に合流するため、スピードが落ちがちで、交通量が多いときは合流を頭にランプウェイへと渋滞が伸びてしまいます。
そして大型商業施設を出たクルマは、アクア連絡道高架下のふたつの交差点のいずれかで右折し、この渋滞の最後尾につくことになります。
一方、国道409号は県道87号との交差点よりも袖ケ浦IC側で、アクア連絡道北側の側道のみの片側一車線となるため、袖ケ浦IC方面から木更津金田ICへと進んできたクルマは、この交差点で「左折→右折」というクランク状の動きが求められます。
これらが複合して、「アクアラインに流入待ちのクルマがふたつの交差点を中心に、周辺の広い地域にあふれる状況」を作り、通過に時間のかかる渋滞となってしまうのです。
これらの交差点を迂回しようにも、北は東京湾、南には小櫃川が流れ、“小回り”での有効な通り抜けルートはありません。またアクアラインを回避して京葉道路に回っても、距離が長くなる上に、渋滞も発生しがちなことから、時間短縮効果はあまり見込めません。
現在、東京湾アクアラインでは、混雑時間帯に値上げし、空いている時間帯を安くして交通分散を図る「ETC時間帯別料金の社会実験」が行われていますが、その効果は限定的です。2025年4月からは、その料金差をより拡大する予定ですが、もし十分な効果がなければ、時間をずらして帰る以外に、渋滞回避の策はないと考えていいでしょう。
※ ※ ※
千葉県の道路整備の遅れについては、成田空港闘争関連のテロにより、収用委員会が長期にわたって機能停止となったことが要因として挙げられています。ただし木更津市のこのエリアについては、そもそもの都市計画に起因する渋滞とも考えられます。
以上、千葉県でとくに渋滞が目立つエリアとその原因についてご案内しました。これらエリアをドライブする際は、そもそも混雑していることを念頭に、時間と心に余裕を持って臨みたいところです。