
ロシアの新鋭戦闘機Su-57が初飛行から15年目にしてようやく最初の輸出先を得たようです。しかしSu-57の生産は遅々として進んでいないため、その実現性には多くの問題が残るようです。なぜ本格生産できないのでしょうか。
ウクライナ侵攻の影響はSu-57の生産にも
ロシアの新鋭ステルス戦闘機スホーイSu-57が、初飛行から15年を経てついに初の輸出先を得た可能性があります。
一部報道によると、北アフリカのアルジェリアが購入するそうです。同国は、長年にわたってロシア製戦闘機を運用してきた実績があるため、Su-57の導入は技術的な飛躍を意味するものの、その実現性には多くの問題が残るようです。
そもそも、Su-57はロシアが開発した第5世代ステルス戦闘機であり、西側のF-22「ラプター」やF-35「ライトニングII」に対抗する目的で設計されました。しかし、その開発は困難を極めており、最初の試作機は2010年に初飛行を果たしたものの、量産は一向に進まず、正式な戦力化には長い時間を要し、2025年現在に至るも第一線に配備されていません。
その主な理由の1つにエンジンの問題があります。Su-57は新型エンジンAL-51Fを搭載する予定ですが、開発が遅延しており、現在は暫定的にSu-35にも搭載されている従来型のAL-41F1エンジンが使用されています。
さらに、ロシアは2022年のウクライナ侵攻以降、西側諸国から厳しい経済制裁を受けています。その影響で、アビオニクス(航空電子機器)や先進的な半導体の調達が困難になっており、戦闘機の生産能力に大きな制約が生じていると考えられます。これにより、Su-57の生産は極めて低調で、昨年の量産機数はわずか2~3機と推測され、ロシア空軍自身の配備すら進んでいない状況です。
このため、ロシア空軍ではSu-57の配備遅れをカバーしようと、Su-35SやSu-30SMといった既存の「フランカーシリーズ」の生産を拡充しています。このような状況でSu-57をまとまった数の機体輸出できるのか、疑問が残ります。
アルジェリアでも評価試験しかできない可能性が
前述したように、アルジェリアはソ連時代からロシア製の航空機を多く運用しており、現在スホーイSu-30MKAを主力戦闘機として運用しています。同国は新鋭機の導入に関心を示しており、Su-57を購入する意思があると報じられてきました。しかし、仮に契約が締結されたとしても、ロシア側が短期間で実際に機体を供給できるか疑わしいのは先に述べた通りです。
ゆえに現状では、アルジェリア向けに納入できるとしても数機程度にとどまる可能性が高いと言えるでしょう。これは主戦力となり得る実用的な配備というよりも、評価試験の段階にとどまることを意味します。
アルジェリアにとってSu-57は新しい運用概念を必要とする機体であり、現在のSu-30MKAと比べても整備や運用のハードルが格段に高いと推測されます。そのため、導入後すぐに実戦配備することは難しく、まずは限定的な運用を通じて戦術や技術的適応を進める段階が続くのではないでしょうか。
仮にロシアが生産能力を向上させ、安定した供給体制を確立できれば、アルジェリア向けのSu-57配備が本格化する可能性はあります。しかし、エンジンや半導体問題が依然として未解決である以上、短期間での量産は見込めないかもしれません。
一方で、アルジェリアにとってもSu-57導入は政治的な意味を持ちます。近隣国モロッコが新鋭のF-16Vを導入し、米欧との軍事協力を強化するなか、アルジェリアはロシアとの関係をより深めることで対抗しようとしています。Su-57がその象徴的な存在となる可能性は十分にあります。
とはいえ、ロシアにとっても現時点でのアルジェリアへのSu-57輸出は「象徴的な取引」にとどまる可能性が高く、両国とも同機を実戦力としてカウントできるようになるまでには、さらなる時間と技術的進展が必要であるのは間違いないでしょう。