マスターズ覇者のJ・ラームがLIVゴルフに電撃移籍 久常涼は欧州ツアーで新人王【海外男子ツアー10大ニュース】

今季も数多くの話題が生まれたゴルフ界。その中から、編集部が各ツアーの10大ニュースをピックアップしてシーズンを振り返る。今回は『海外男子ツアー』。
■ジョン・ラームはマスターズ初制覇から「LIVゴルフ」へ電撃移籍

今年の「マスターズ」では、ジョン・ラームがスペイン人4人目の栄冠に輝いた。「この優勝が僕にとって、そしてスペインのゴルフ界にとって、どんな意味があるかということも大きい。スペインのメジャー10勝目、マスターズ優勝4人目、そして私のメジャー2勝目。とても信じられない」と優勝会見で喜びを語った。これでラームはマスターズと「全米オープン」を制した初めてのヨーロッパ人となった。「グランドスラムを成し遂げるには、長い道のりが待っている。フィル(ミケルソン)とアーニー(エルス)のような2人のプレーヤーができなかったことが、それを物語っている」と謙虚に話した。その8カ月後の12月、衝撃のニュースがゴルフ界を震撼させる。ラームがサウジアラビア政府系ファンドに支援される「LIVゴルフ」に電撃移籍を発表。米メディアでは契約金は推定3億ドル(約430億円)とも、5億6500ドル(約810億円)とも言われている。「LIVゴルフに加わり、このスポーツに成長をもたらす新しいものの一部になれることをとても誇りに思う」と話した。

■ブルックス・ケプカが「全米プロ」を3勝目 LIVゴルフ選手による初のメジャー制覇

今年のメジャー第2戦「全米プロ選手権」を制したのは、ブルックス・ケプカ(米国)だった。それまでに「全米オープン」を2度、全米プロを2度制していた“メジャーハンター”の面目躍如となった。ケプカは2022年に「LIVゴルフ」へ移籍し、ゴルフ界に波紋を呼んだ。近年、膝の故障の影響で成績が低迷していたが、今春になって復活。ビクトル・ホブラン(ノルウェー)とのマッチレースを制して、“LIVゴルフ選手による初のメジャー優勝”を決めた。「信じられない。うれしすぎて言葉を失っている。この勝利は間違いなくLIVの助けになると思う。けれど、正直に言うと、今は自分の勝利に興味がある」と話したケプカ。来シーズンは、今年のマスターズを優勝したラームもLIVゴルフに参戦。LIVの動向からますます目が離せない。

■PGAツアーとLIVゴルフを支援する「PIF」が電撃統合を発表

6月6日、PGAツアーとDPワールド(欧州)ツアーは、対立関係にあったLIVゴルフを支援するサウジアラビア政府系ファンドの「PIF」(パブリック・インベストメント・ファンド)との統合に合意したと発表した。今後、三者共同で新たな団体を設立し、ゴルフを世界的に促進・成長させるという共通の目標に向かって歩み出すという。激しく敵対していたはずのジェイ・モナハンPGAツアー会長と、PIFのヤセル・ルマイヤン会長が笑顔で握手を交わしたが、すぐさま批判の嵐が押し寄せた。PGAツアー、DPワールドツアー、LIVゴルフのどのツアーの選手にも知らされずに交渉が行われ、一方的に発表へ至ったからだ。反LIV派の急先鋒であるローリー・マキロイ(北アイルランド)は水面下で進んでいたことは知りつつも、「こんなにも早く結論が出され、発表されるとは思いもしなかった。もっと時間が欲しかった。もっと話をしたかった」と批判した。しかし、その後統合に向けて具体的な動きはなく、12月初旬にはジョン・ラームがLIVゴルフへ電撃移籍した。まもなく12月31日に、統合の締め切りを迎えるが、その期限も延長されるとの一部報道がある。トッププレーヤーの“引き抜き”が相次ぐ中、PGAツアーの対応に注目が集まる。

■超名門・ロサンゼルスCCで初の「全米オープン」開催 W・クラークがメジャー初V

今年のメジャー第3戦「全米オープン」は、米カリフォルニア州にあるザ・ロサンゼルスカントリークラブのノースコースで開催された。映画の都として知られるロサンゼルスの街の超中心地、ビバリーヒルズに36ホール(ノース、サウスコース)を有する超名門コースだが、不思議なことにハリウッドスターの名前はない。13番ホール沿いに豪邸を構えたプレーボーイ誌の創設者、ヒュー・ヘフナー氏、14番フェアウェイに暮らした20世紀アメリカを代表するスターのビング・クロスビー氏も会員にはなれなかった。メンバーにはセレブの名前は今もなく、ロサンゼルスの実業家たちがメンバーに名を連ねている。そして2023年、知られざるコースが世界へお披露目されることとなった。その注目の一戦で優勝したのは、当時29歳のウィンダム・クラーク(米国)。10年前に乳がんで亡くなった母親に捧げるメジャー初Vだった。

■「肩の荷が下りた…」リッキー・ファウラー 4年半ぶりの復活優勝

2019年の「WMフェニックス・オープン」でPGAツアー5勝目を挙げたリッキー・ファウラー(米国)。その年には、長年の恋人アリソンと結婚し、長女マヤちゃんが誕生した。だが、その後ゴルフの調子は急降下。一時は世界ランキング185位まで落ちるなど、不調に陥り苦しい時期を過ごした。それでも、今年6月の「全米オープン」で5位タイに入り復調のきっかけをつかむと、迎えた7月の「ロケット・モーゲージ・クラシック」。コリン・モリカワ(米国)、アダム・ハドウィン(カナダ)との3つ巴のプレーオフを制し、実に4年半振りのツアー6勝目を手にした。「肩の荷が下りた…」と苦しかった日々を振り返ったファウラー。73ホール目でウイニングパットを沈めた瞬間、ファウラーは目を閉じながら上を向き、安どの表情で静かにうなずいた。

■松山英樹、10年連続の「ツアー選手権」出場を逃す フェデックスカップ・ランキングは50位で終了

米国男子ツアーに参戦して節目の10年目を迎えた松山英樹。今年は苦難のシーズンとなった。昨秋にスタートした2022-23年のレギュラーシーズンは、怪我の影響もあり、3位以内は0回、トップ10入りも2回のみ。フェデックスカップ・ランキングは、57位でプレーオフシリーズに突入した。そこで注目されたのは、フェデックスカップ・ランキング30位までの選手が出場できるプレーオフシリーズ最終戦「ツアー選手権」への切符。その試合に松山は昨季まで9年連続で出場しており、この記録は現在継続中の選手では最長となっていた。巻き返しが期待された8月。プレーオフシリーズ第1戦「フェデックス・セントジュード招待」を迎えた松山は、最終日に猛チャージを見せて「65」をマーク。ランキングを57位から47位に上げて、プレーオフシリーズ第2戦「BMW選手権」にコマを進めた。しかし、BMW選手権の2日目に背中痛を訴え、無念の途中棄権。ランキングは50位に終わり、10年連続となるツアー選手権出場を逃した。来年は、松山の逆襲に期待したい。

■久常涼が欧州ツアー初V 日本人初の新人王に!

今年は、海外で若手日本人選手の活躍が目立ったシーズンだった。まず、2月のアジアンツアー「インターナショナルシリーズ・オマーン」で金谷拓実が海外ツアー初優勝。「プロとして初めて海外のツアーで優勝することができて本当にうれしい」と悲願の1勝をつかんだ。そして、9月のDPワールド(欧州)ツアー「カズー・フランスオープン」では21歳の久常涼が快挙を成し遂げる。首位と4打差で迎えた最終日に7バーディ・2ボギーをマーク。トータル14アンダーで鮮やかに逆転し、欧州初優勝を飾った。青木功、海外メジャーとWGC(世界ゴルフ選手権)で勝利している松山英樹に続く日本勢3人目の同ツアー勝者として、歴史に名を刻んだ。シーズン終了時のポイントランキングで17位に入り、有資格者7人を除いた上位10人に与えられる来季の米ツアー出場権を獲得。日本人初の欧州ツアー新人王にも選ばれた。「とてもうれしいし、本当に驚いている。いい経験を積むことができて、とても楽しかった」と振り返った久常。来季は米ツアーへ主戦場を移す。

■ライダーカップは欧州チームの勝利 一方、ローリー・マキロイが“場外乱闘”!?

2年に1度行われる対抗戦「ライダーカップ」は、ホームの欧州選抜が米国選抜に5ポイント差をつけて圧勝した。一方、その裏で起きた、ある“小競り合い”が話題を呼んだ。事の発端は、2日目の午後に行われたローリー・マキロイ(北アイルランド)&マシュー・フィッツパトリック(イングランド)対パトリック・キャントレー&ウィンダム・クラーク(ともに米国)の一戦だった。イーブンで迎えた18番、ここで米国のキャントレーが12メートルのバーディパットを沈めて雄たけびを上げたが、その後、キャントレーのキャディがとったある行動にマキロイが激怒した。キャントレーのキャディは、長らくタイガー・ウッズ(米国)のエースキャディを務めてきたジョー・ラカバ氏。そのラカバ氏がキャントレーのバーディを受けて、帽子を振って観客に猛アピール。それが後に打ったマキロイのパッティングの邪魔をしたとして、マキロイがラカバ氏に詰め寄った。ホールアウト後、険しい表情で言葉を交わして一度は離れたが、帰りの駐車場ではマキロイが誰かに激しく詰め寄るシーンが目撃された。「あれは一線を超えていた!」など、厳しい口調で非難している姿がテレビ放送のカメラに映されるほどの騒動になった。

最終日の記者会見でこの騒動を振り返ったマキロイは「フィッツパトリックと僕だけでなく、チーム全体に対して失礼だと思ったんだ」。それでも、「時間が解決してくれるだろう」とこの一件に関して、“ノーサイド”であることを強調。この場外乱闘に終止符を打った。

■日本と由縁があるコリン・モリカワが「ZOZOチャンピオンシップ」初優勝

日本で開催される唯一の米国男子ツアー「ZOZOチャンピオンシップ」。5年目を迎えた今年、優勝したのはコリン・モリカワ(米国)だった。ハワイ出身の日系アメリカ人の父と、中国系アメリカ人の母の間に生まれた26歳は、初日に6バーディ・ボギーなしの「64」で単独首位発進。2日目に「73」を喫して8位タイへ後退するも、3日目は「66」と巻き返し、首位と2打差の単独4位で最終日を迎えた。その最終日は、序盤から代名詞でもあるアイアンショットの切れ味が抜群。圧巻のプレーで日本のファンを沸かせ、7バーディ・ボギーなしの「63」と4日間のベストスコアをマークした。終わってみれば後続に6打差をつける圧勝。「モリカワという名前を持つ僕が、日本で勝てたことには特別な意味がある。愛する国で勝てた」。モリカワにとって日本とのつながりを深く感じる優勝だった。

■タイガー・ウッズが8カ月ぶりの復帰! 息子・チャーリー君と4年連続の共演

今年4月の「マスターズ」を途中棄権した後、右足首の再手術を受けてリハビリに専念していたタイガー・ウッズ(米国)。自身がホストを務めるツアー外競技「ヒーローワールドチャレンジ」で8カ月ぶりに復帰した。初日こそ「75」を喫したものの、2日目、3日目はアンダーパーのスコア「70」、「71」をマークし、最終日はイーブンパーでラウンドした。タイガー本人は、「さびついていた僕のゴルフの“サビ”を、かなり落とすことができたのはグッド。でも、まだまだ」と満足はしていない様子。それでも、トレーニングや練習を十分に行えて、しっかりとコースを歩き4日間72ホールを戦い抜いたことは確かな前進だった。その後、息子・チャーリー君とともに親子競技の「PNC選手権」に4連連続で出場。「ショートゲームの感触は「2週前よりずっと良くなった」とタイガーらしい小技を披露した。来シーズンの初戦は自身がホストを務める「ジェネシス招待」(2月15~18日、米カリフォルニア州・リビエラCC)になる予定だ。

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