「大ピンチのパナマ運河」に強力ライバル!? 250年越しの悲願「メキシコ横断鉄道」開業秒読み 世界を巻き込む物流シェア争いに?

メキシコを横断し、太平洋と大西洋を結ぶ鉄道が開通しようとしています。貨物列車を走らせ「パナマ運河」のライバルとなります。実はこの計画、大昔から実現に向けて動きがあったものでした。

雨期なのに水がない危機的状況のパナマ運河

 大西洋と太平洋を水路で繋ぐ、中米の「パナマ運河」。物流の要衝であることから、パナマ政府に毎年もたらす収入は平均46億ドル(約7000億円)以上におよびます(英ファイナンシャル・タイムズ紙)。 その経済効果を、一部でもいいからどうにか呼び込めないかと色気を示しているのが、同じように大西洋と太平洋の双方に面しているメキシコです。運河の代わりに、鉄道路線を整備して2つの大海を結ぼうとしているのです。 ことし12月には運行開始を予定。大統領自らが鉄道路線を試乗して成果をアピールしています。実はスケールも歴史も大きなプロジェクトなのです。

 2023年、パナマ運河は記録的な干ばつに見舞われています。5月から12月のパナマは本来であれば雨季だというのに、エルニーニョ現象による深刻な水不足で水位が下がり、運河を通航できる船舶の数と重量の制限が設けられ、順番待ちで船の渋滞が発生しています。 1月には本格的な乾季となり、さらに運河の水位が下がる可能性があります。そこをにらんだメキシコの作戦。首尾は上々に見えます。 2018年に発表されたこの「トランジスミアン鉄道」プロジェクトは、大西洋の一部であるメキシコ湾と太平洋を「テワンテペク地峡」に線路を通すことで結ぼうという案で、距離は約200kmです。 このルートを旅客・貨物輸送に使うという構想は、実は、スペインの植民地だった18世紀末にすでにありました。すなわち、250年越しの悲願なのです。かつてここに「テワンテペク鉄道」が敷設されましたが、1907年開業のわずか7年後にパナマ運河が開通したために使われなくなった過去があります。今回それが蘇生されることになりますが、同鉄道にとって、パナマ運河はいわば「宿敵」のような存在。今回こそは勝算があるのでしょうか。

海上貨物を陸送する苦悩 かつては無茶苦茶な計画も

 船で直接大西洋と太平洋を行き来できるパナマ運河に対し、鉄道で両方の大海を結ぶメキシコ。後者の最大のネックは「荷物を船から列車に積みなおし、反対側の港で別の貨物船に積む」という作業が必要なことでしょう。海上輸送の最大のメリットが「大量に運べる」であることを考えると、一度積み込んだ大量の荷物を降ろしてもう一度積むのは大変なロスです。 実はこうしたことから、19世紀末に計画された案で「並走する3両の蒸気機関車で貨物船をそのまま牽引して所要時間13時間で港から港へ運ぶ」という無茶な計画もあったようです(テオ・ノッテブーム教授、アタナシオス・パリス教授、ジャン=ポール・ロドリグ教授の共同プロジェクト「港湾の経済、管理、政策」より)。 20世紀初頭の近代化で船舶の重量が重くなったことで、この案はいったん立ち消えとなりました。しかし1940年代に再燃し「1万5000トンの船までなら船ごと陸送できる」と真剣に考えていたものの、さらなる船舶の大型化で再び断念した経緯があります。 もちろん、ここに「新たな運河」を作ろうという計画も、18世紀末から何度も浮上しては消えてきました。難点は、パナマ運河がある場所は最高地点が海抜26mなのに対して、メキシコでは約10倍の海抜224m。横断距離もパナマ運河の約3倍あります。 1964年刊の米ニューヨークタイムズ紙には、「核爆弾で山を吹き飛ばせば3分の1の予算で済む」など物騒な記述が残っています。また、メキシコと米国の間での政治的なあつれきもあったようです。 250年来のメキシコの悲願である「大西洋と太平洋を結ぶ物流ルートの整備」案は、異常気象を後ろ盾に宿敵のパナマ運河からどこまで顧客を奪い取れるのか、注目どころと言えます。

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