<CMEグループ・ツアー選手権 最終日◇22日◇ティブロンGC(フロリダ州)◇6734ヤード・パー72>
山下美夢有は「70」「69」「71」「70」とアンダーを並べたが、トータル8アンダー・36位タイでシーズン最終戦を終えた。優勝スコアがトータル26アンダーの伸ばし合いでビッグスコアを出すことができず、持ち味のショット力、パッティングもなかなか光らなかった。
5バーディ・3ボギーだった最終日は、「もったいないミスもしてしまった。ショットが安定してなかったけれど、それ以上にショートゲームの大事さも分かった。もっとレベルアップしないといけない」。最後の最後まで、自らに辛口だった。
華々しいルーキーイヤーだった。昨年12月のQシリーズ(米最終予選会)をトップ通過し歩み始めた米ツアーの道。「AIG女子オープン」(全英)でメジャー制覇、「メイバンク選手権」での2勝目と活躍し、日本勢史上3人目のルーキー・オブ・ザ・イヤー(新人賞)を戴冠した。最終戦までジーノ・ティティクル(タイ)とプレーヤー・オブ・ザ・イヤー(最優秀選手賞)を争ったが惜敗。“2冠”の快挙は逃したが、ポイントランキング2位、賞金ランキング3位(354万5888ドル/約5億5500万円)という成績に、「表彰もされて、最終戦まで戦い終えられた。いい一年になったと思います」と笑顔で振り返った。
スポットライトを浴びるまでは、もちろん苦しい時間もあった。ツアーの雰囲気に慣れず、時差を伴う移動で思い通りの行動ができなかったこと。予選カットを意識しなければならない状況に「マイナスに考えることも少しはあった」と気持ちが落ち込んだことも。そんなときに支えてくれたのは「家族」だった。時差を気にせずにスイングチェックをしてくれるコーチである父、たわいもない連絡を取る母、そして弟に妹。Qシリーズから支えてくれたキャディの存在も大きかった。
「徐々にいろいろ考えて、練習も細かいところを見直して。それに集中し出したらスコアより“きょうのプレー”に集中できるようになった。初めてのコースが多かったけれど、キャディさんもマネジメントをいろいろ考えてくれました」
『自分を褒めてあげたい部分は?』という質問には、「ええ…。あんまりない…」と笑う。『69.81』で平均ストローク60台をマークし“日本勢ルーキー”としては初の快挙にもなったが、「気づいたらそうなっていた。意識していない」とさっぱりしている。
「勝ってうれしかったけれど、それ以上に技術をレベルアップさせたい。優勝は優勝って分かっているけれど、もっと強い選手に、名前を覚えてもらえる選手になりたい」。この日同組で回ったリディア・コ(ニュージーランド)のような姿がお手本。常に上だけを見て、成長を求めている。
忘れられないシーンがある。全英の72ホール目、たくさんの声援を浴びながらフェアウェイを歩き、ウイニングパットを沈めた。「絶対に忘れない。あの景色を見るとまたメジャーで勝ちたいという気持ちになる。そのためにしっかり準備をしていきたい」。
短いオフを大事に過ごしたい。とはいえまずは、10月「ロッテ選手権」からの8連戦をこなした自分を休ませてあげる。「家に帰って、犬に会いたい。癒されて、ちょっとぼーっとして、ご飯を食べて…みたいな感じがいいですね(笑)」。家族に会うのが楽しみだ。(文・笠井あかり)
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