ゴルフスイングも“お手つき”厳禁! お腹で打てば芯で打てるようになる【四の五の言わず振り氣れ】

昨年でツアーから撤退した上田桃子やルーキー・六車日那乃などを輩出する「チーム辻村」を率いるプロコーチの辻村明志氏が、お腹で打つ重要性を教えてくれた。
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チーム辻村の特別会員に、元プロ野球選手の森本稀哲さんがいます。日本ハムファイターズのコーチに就任してからは、以前ほどゴルフの練習に参加できなくなりましたが、折に触れてチームの教え子たちにアドバイスしてくれます。競技は違いますが、元プロ野球選手の経験は、本当に役に立つことが多いものです。

その稀哲さんが久しぶりにゴルフの練習にやってきたときのこと。なかなか思うようなボールが打てずに、ボソッとこんなことを呟きました。

「野球でもそうだけど、調子が悪いときってどうしても手が先に出ちゃうんだよね」

手が前、ボール方向に出るとは、インパクトで手が体から離れてしまい同調しないということです。意識として手で打ちにいこうとすることで、野球でいうなら向かってくるボールを待てず、上体が突っ込み手打ちになってしまう。またゴルフでいうなら手上げ、ダウンでの上体の突っ込みや手元から動くドアスイング……などの現象になるのでしょうか。

ボクはこれを”お手つき”と呼んでいます。百人一首やカルタでも、お手つきはペナルティ。スイングでもミスショットの最大の原因だとボクは考えています。

では、どうしてお手つきをしてしまうのでしょうか?

スイングは下半身主導です。地面から足裏でエネルギーを吸い上げ、下から動き出すのがスイングであり、それからようやく腕とクラブが動き出し、手を使うのは最後の最後、もしくはまったく使わないのが理想です。

クラブを持たずに両腕をクロスさせ、手のヒラを両肩に当ててシャドースイングしてみてください。腕や手がなければ、スイングの動きは実にシンプル。多くの人は「たったこれだけ?」と驚くのではないでしょうか。そうなのです。クラブを持つから、小さなボールを上手に打とうとするから、腕や手がムダな動きをしてしまうのです。

森本さんは現役時代、手を消すために徹底してティーバッティングをやったそうです。下半身から動き出し、腕とバットは最後の最後に動き出し、体の真正面でインパクト。ゴルフでもボクは選手たちに、ティアップしたボールを力感も飛距離も70〜80%でいいので、ストレートボールをひたすら打たせますが、これも下半身主導のスイングの基本を身に付けるためです。扱いやすいクラブ、たとえば9番アイアンで100ヤードを目安に打ち続ければいいでしょう。

よくボクは選手に、「腹で構えて、腹で上げ、そして腹で打ちなさい」と教えていますが、手の意識を消すばかりでなく、腹(下半身)で体を動かすことが、芯でボールをつかまえる感覚にもつながるはずです。

他にも選手たちには、両モモにバランスボールを挟んで打たせたり、両足の親指と人差し指にティペグを挟み、足裏が浮かないようにして打たせたりもします。足裏で地面をつかみ、下半身を安定させしっかり立つことが、腕を消す大前提だからです。

またスポーツタオルをクラブのように握らせて振らせることもします。最後の最後に動く腕やクラブは、フィニッシュで体に巻きつくようなイメージが大事です。そのために実際に、体に巻きつくように振らせるのです。手から動けば、なかなか上手に体に巻きつかないことも理解できるでしょう。

ボクの師匠である故・荒川博先生は、スイング中の腕をよく消防車のホースにたとえました。ボクのいうお手つきは、このホースに流れる水をどこかで詰まらせてしまう動きです。スイング中にホースに流れるのは、臍下丹田(せいかたんでん)から出される氣です。手はホースの先端であり、意識するとすればエネルギーである氣を、ターゲット方向にすべて放出する。それだけで十分なのです。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子、六車日那乃らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。今季は千田萌花と藤本愛菜をプロテスト合格に導いた。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。

※『アルバトロス・ビュー』880号より抜粋し、加筆・修正しています

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