<いわさき白露シニア 初日◇21日◇いぶすきゴルフクラブ(鹿児島県)◇7074ヤード・パー72>
「とりあえず18ホール完走できて良かった」。片山晋呉は初日のホールアウト後に安堵と満足感が入り交じった表情でそう話す。
腰に激痛が走ったのは、6月の「スターツシニア」開幕前。椎間板に細菌が感染する化膿性椎間板炎と診断され、緊急入院を余儀なくされた。ほぼ寝たきりの約2カ月の入院生活を経て、クラブが持てるようになったのは9月に入ってから。今大会が約半年ぶりの復帰戦で、スタート前のティイングエリアでは「9ホールでやめるかもしれない」と漏らしていた。
開幕前日にはプロアマで18ホール回り「70台はまだ出ないと思う」と語っていたが、174日ぶりの試合で2バーディ・3ボギーの「73」でまとめて、1オーバー・43位タイ発進。これには「70台が出るか出ないかだと思っていました。よく70台が出たなと」本人も驚く。
スタートホールの1番では、ドライバーでのティショットを左に曲げるも、アイアンでピン上7メートルにつけておはようバーディを決めた。「笑うしかない」と満面の笑みを浮かべる。ドライバーの飛距離はまだ戻っていない。同組の渡部光洋には30ヤード置いていかれた。
退院して3カ月ほど経ったが、腰は「今もまだ痛い」。靴下を履くときや靴紐を結ぶときには痛みを伴う。それでも、レギュラーツアーでは通算31勝、5度の賞金王に輝くなど、数々の名勝負を繰り広げてきただけに、試合となると別のスイッチが入るようだ。「何なんですかね。やっぱりゴルフをしたくなっちゃっているんでしょうね。まさか1オーバーは想像もつかなかったです」と少し興奮気味に話す。
しかも退院後は、左手の人差し指の上に右手の小指を乗せるオーバーラッピングだったグリップを、左右の指を絡めずに握るベースボールグリップに変えた。まったく違う握り方で試合で回って1オーバーだったのだ。
スコアやバーディ数といった目標は特に決めていなかった。「18番ホールまでお二人に『大丈夫?』って顔をされないのが僕の中で一番だから、それだけです」。同組の渡部と桑原克典に気を使わせずに回りきることができた。プレー内容については「一個一個みたら全然ですよ。真っすぐ行かないわ、当たらないわ」と語るが、その表情はとにかく明るい。
「明日来られて、朝練習できたら、行けるだろうし、もうダメだろうなと思ったらやめるし。僕の中では一日できたのが大きいです」。そう話していたが、今日の2日目の朝は、体を左右に回しながら「昨日より良い」と言って、10番からスタートした。シーズン最終戦で賞金王争いや優勝争いとは別の世界にいる片山が、静かに熱気を帯びている。
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