<大王製紙エリエールレディス 2日目◇21日◇エリエールゴルフクラブ松山(愛媛県)◇6595ヤード・パー71>
新女王の涙腺が決壊した。メルセデス・ランキング1位が確定した喜びの会見後、ホッと一息ついていたときに師匠の尾崎将司から届いたお祝いメッセージ。佐久間朱莉は声を上げて泣いた。
「すごくうれしい。一番うれしい。ううっ…」
短い文章に込められたジャンボらしい熱いメッセージだった。「朱莉 年間女王おめでとう。1年を通じてほかの誰よりも強かったという証。昨年は勝つことができず随分悔しい思いをしたと思うが、その思いがあったからこそ、今年の成績に繋がったと思う。本当によかったな朱莉。残りの試合皆に今年の集大成を見せてやれ」。何度も読み返し、そのたびに涙があふれ出た。
「ジャンボさんのおかげで年間女王を取ることができましたと報告に行きたいです。ジャンボさんのところに行くようになって、いい結果を報告したいという思いがどんどん強くなった。それが頑張ることができる原動力です」
ひたすら感激。その様子を練習グリーンで見ていて、駆け寄って来てくれたのが、4学年上の原英莉花だ。「朱莉ちゃん、おめでとう」。ひと足先にジャンボ門下生となった姉弟子はハグで祝福。「朱莉ちゃんとは先週の伊藤園レディスで一緒に回ったけど、本当にいい球を打っていた。強いです。女王になるべくしてなったと思う。私も頑張らないといけませんね」と妹分の女王決定の瞬間に立ち会えたことを心の底から喜んだ。
女子では初めて弟子入りを認められた原と、2人目の弟子となった佐久間。2人のゴルフ人生が初めて交わったのは、2017年に千葉・我孫子GCで開催された「日本女子オープン」だった。その年の春に高校を卒業した原は初めてのプロテストに失敗。アマ資格を放棄して、プロとして初めて出場した試合だった。当時、埼玉・川越市立名細(なぐわし)中3年だった佐久間はツアーデビュー戦。そんな2人が予選ラウンドの2日間を同組で回った。
原のバッグを担いだのはジャンボの長男・智春氏。ラウンド中の他愛もない会話のなかで、智春氏に「興味があるなら一度来てみれば」と誘われ、そのままジャンボ門下となった。ただ、国内通算94勝、世界ゴルフ殿堂入りのレジェンドだとは当時の佐久間は知らなかったそうだが、「でも、強烈なオーラを感じました」。
それから8年後の戴冠。原も感慨深そうにこう話した。「女子オープンのときのことはよく覚えています。でも、不思議ですよね。あのとき同じ組で回らなかったら…」。一期一会。人生はだからおもしろい。
ジャンボに弟子入りした笹生優花、西郷真央は海外メジャーを制した。原も「日本女子オープン」を2度制し、「JLPGAツアー選手権リコーカップ」を含めて国内メジャー3勝。これまで、佐久間はどちらかといえば目立たない存在だったが、ジャンボ門下で初の女王となった。「そこが純粋にうれしい」と姉弟子は自分のことのように喜んだ。
原は今季、米下部のエプソンツアーを戦い、来季の昇格を決めて10月に帰国。今大会が国内3戦目だが、トータル6アンダーの5位で、首位の佐久間を4打差で追いかける。同じくジャンボ門下の木戸愛は3打差の4位。同門による三つ巴の優勝争いにも期待が集まる。
「負けないゾ」と原が宣戦布告すれば、佐久間も「私も負けない」と笑顔で応戦。ジャンボのまな弟子たちが最終盤の女子ツアーをさらに盛り上げていく。(文・臼杵孝志)
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