足じゃんけんに算数トレ? 佐久間朱莉、女王戴冠の裏にあった“独特すぎるトレーニング”の数々

<大王製紙エリエールレディス 2日目◇21日◇エリエールゴルフクラブ松山(愛媛県)◇6595ヤード・パー71>

メルセデス・ランキング2位で追っていた神谷そらが予選落ちしたことで、新女王襲名が決まった佐久間朱莉。昨年まで無冠だった22歳が急成長した背景には、オフシーズンから取り組む“独特”なトレーニングがある。
「ウエイトトレーニングは行わず、リハビリのような細かい動きのトレーニングをしています。足でグー、チョキ、パーをできるようにするなどです」

そのあまりに独特なトレーニングの内容を明かすのは、佐久間のトレーナーを務める藤山和也氏(理学療法士/Golf Physio Lab)だ。藤山氏は、昨年の「大東建託・いい部屋ネットレディス」から佐久間のケアを担当し、それ以降はコンディショニング担当としてサポート。シーズン終了後に契約し、コンディショニングに加え、パフォーマンス向上を支えている。

前述したように、佐久間は筋力トレーニングというものはほとんど行わない。その分、脳神経・感覚を研ぎ澄ますことが目指されている。ゴルフのトーナメント会場ではあまり聞かない、この“佐久間流トレーニング”には、“足じゃんけん”のように驚くべきメニューが多い。

もともと実際のスイングと撮影時に起こりがちな誤差をなくし、『思った通りに体を動かしたい』というのが佐久間の要望。そのため、今年1月の合宿から、指先の動きや細かい部分までアプローチして感覚と動作の「誤差」を埋めることに取り組んでいる。

そのひとつに、毎朝アップに取り入れている『算数を使った目と脳のトレーニング』がある。ゴルフと算数。まったく関係がないようにも思えるが、いったいどういう効果をもたらしているのか?

やり方は、まずは正面を向いた佐久間の顔を横から挟むように藤山氏が手を出し、佐久間は顔を動かすことなく目だけで右→左をパッ、パッと見る。その瞬間、藤山氏は目が追っている方向の指を1~5本立てて、その両方の指の合計を答えさせる、というもの。「目で見て、脳に伝えて考え、それを口に出す」。これで、情報処理能力や注意力、反応速度を鍛えあげている。

今年9月の「ソニー 日本女子プロゴルフ選手権」から導入した『左打ち練習』もそう。“体のバランスを整えるために左打ちの練習を…”というのは聞いたことがあるが、佐久間のそれは意味合いが少し異なる。これもメーンは「脳の錯覚を整える」ためのメニューだ。「もちろん体のバランスを取る目的もありますが、慣れない打ち方をすると、視覚情報の処理や手の動かし方を意識するなど、考えながら打つから、脳トレにつながるのです」。確かに利き手と逆の手で箸を持つ時に、頭のなかでいろいろと考えるというのは、誰もが経験があるはずだ。

パターは右手のときの順手グリップをそのまま使ってクロスハンドで打つため、右打ちに戻すと距離感がつかみやすくなるという。佐久間も「ロングパットの距離感が良くなった」と手応えを感じており、藤山トレーナーも「慣れない左の感覚を味わうことで、右が簡単になり距離感の向上につながっている」と、その効果の理由を話す。

この他、光るボタンを使い瞬発力・動体視力・反射神経を鍛える『ブレイズポットを使用したトレーニング』や、「毎朝、美顔器で表情筋を緩めてもらっています」という『小顔ローラートレ』というものもある。顔の筋肉をほぐし、緊張を和らげる効果が狙いだ。あまりに多種多様なメニューに「最初は何をやっているのか分からなかった」と困惑していた佐久間自身も明かすが、今ではそれが当たり前の光景になっている。

さらに「切り返しが速く、ショットにバラつきがあった」というスイングを改善する時には、水を入れて使用する不安定荷重トレーニング器具のウォーターバッグを活用した。「(バックスイングをして)波が右に動いている最中に切り返してしまうと波が立ってしまい、動きは急加速してしまう。そうならないように波の動きに合わせて切り返す。間が取れるようにもなり、切り返しのタイミングがつかめるのです」。

つまりはこうだ。バックスイング中に下半身が先行しすぎると、右膝が前に出たり上半身が起き上がりやすくなる。それを不安定なウォーターバッグで行うことで、急がずに切り返す以外の選択肢がなくなる。これが前傾姿勢の維持、インパクトの安定につながる。この練習のおかげで、ラウンド中にミスショットが出ると「ウォーターバッグだ」(佐久間)と自身で気づき、改善できるようになっていると本人も明かした。

この器具は、コースにも持参。「苦手な傾斜でウォーターバッグの素振りを行い、良い動きをその傾斜でもできるようにしました。あらゆるライからでもいいショットを打てるようにするためです」。ラウンド中のさまざまなライで良いショットが打てるよう、実戦を想定した練習にも生かされている。

藤山氏は、海外メジャーも含め佐久間の今年の全試合に帯同し、ケアやアップのサポートだけではなく、ラウンド前後の練習での動きも確認している。「今まで出会ったことのないタイプのトレーナーということもあって、最初は戸惑うこともあったと思いますが、真剣に毎日コツコツ取り組む姿勢にプロフェッショナルの一面を感じました。少しずつの積み重ねが、1年でとても大きな成長につながったと思います。これからも目標に向かって突き進んでいきたいです」。まさに二人三脚。年間女王が確定した瞬間には「泣きそうです」と感極まった。今後もチーム一丸となって挑戦を続けていく。(文・高木彩音)

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