
昭和の時代にはちょっとした冗談で済まされていたことでも、令和の現代ではまったく通用しないことがある。事件にまで発展したり、裁判沙汰で人生を棒に振るようなことにもなりかねない。そんなハラスメントについて、四六時中ゴルフ漬けのロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典は語る。
犯罪になってもおかしくないようなハラスメントの責任を取って当事者が引退したり、関係した企業のトップが総入れ替えになったり、ハラスメント関連のトラブルは後を絶ちません。
令和という時代は誰にでも優しい社会になっていくのだと明るい未来を予言する賢者もいますが、昭和時代を引きずっている中高年は、まだまだ危なっかしい人もいて、ドキドキしたりします。
先日も、あるゴルフコンペで還暦過ぎの同伴者が、グリーン上で綺麗に拭いてもらったボールを受け取りながら、キャディのお尻をサッと撫でるのを見ました。
「もうドライバーが飛ばない。昔のように速く振れない」と悩んでいた人間とは思えないスピーディーな軽業は、昭和の頃に“もも、しり、三年。むね、八年”(今ではこんな言葉は死語ですが、昭和の時代には本当にあったのです)とかシャレながらのトレーニングの賜物だといわんばかりでした。
すぐに注意をしました。ゴルフコースでこの手のセクハラが問題になって、会員資格停止や出禁処分になったという事例が実際にあるのです。
本人は、キョトンとして、キャディとのコミュニケーションだし、ランチでアルコールが入ったし、悪気はないのだと弁明していました。念のためと、途中の売店で、最も高額な心付けを彼のサインで購入してキャディに渡して、頭を下げさせました。
ちゃんとしたメンバーコースでトラブルを起こせば、紹介してくれたメンバーに迷惑をかけることになりますし、そもそもそんなトラブルが自分のいた組で起きるなんてゴルファーとしてとても恥ずかしいことです。
「冗談も通じない世の中なんて、面白くない」と、後日コンペの幹事に同伴者が、無理矢理謝罪させられたとクレームを入れたことを知りました。
冗談で済むことのレベルが変わっているのです。ゴルフコースには、やや時代遅れの雰囲気があるとはいえ、ハラスメントについては令和の基準です。
セクハラだけではなく、スタッフへの暴言や過剰なサービスの強要などのカスハラも大事件になっています。ゴルフコースも、スタッフを守るために事件にせざるを得ないのです。実際に、過去にはトラブルがトラウマになって、精神を病んでしまい退職するようなスタッフもいたそうです。
他の業界で耳にする過去に遡って事件化するような話は、ゴルフコース界隈では耳にしませんが、ハラスメント対策を不自由に感じるのはヤバい人である証明ですので、しっかりと自覚しましょう。
そんな大袈裟な、と馬鹿にしていた人ほど、ある日突然、加害者認定されて、ゴルフコースを出入り禁止になり、悪い意味で有名人になってしまうのです。
昔の悪しき習慣から抜け出せないという人は、ワガママを我慢するのもゴルフの一部ですから、面白がって我慢を楽しんでみてはいかがでしょう。
ゴルフコースは、楽しくゴルフをする場所です。純粋にゴルフを楽しむ気持ちに特化すれば、余計なことは気にならないし、触らぬ神に祟りなしなのです。令和の現代では、いま一度肝に銘じておいて損はありません。(文・篠原嗣典)
篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年東京都文京区生まれ。中学1年でゴルフコースデビューと初デートを経験しゴルフと恋愛のために生きると決意。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。ベストスコア「67」、ハンディキャップ「0」。
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