利府GCを熱くした今季“最恐パー3” 勝敗を分けた難ホールの舞台裏【現地記者コラム】

ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンは、第2回リランキング実施前の最後の試合として、シードを持たない選手にとって重要な一戦となった。ただ、それ以上に注目を集めたのは、利府ゴルフ倶楽部の名物ホール・15番パー3で起きた大波乱だったかもしれない。
そもそも、今年の利府は「グリーンが特に硬い」と選手が口をそろえるほど仕上がっていた。青木瀬令奈のコーチ兼キャディ・大西翔太氏は開幕前に「優勝スコアは一桁かもしれない」と予想。昨年覇者・安田祐香も「2桁いけば優勝争いかな」と話しており、“耐える戦い”になると見られていた。

実際、過去の成績を見ても2021年は西村優菜が15アンダー、22年は山下美夢有が18アンダー、23年は岩井明愛が13アンダー、昨年は短縮競技ながら9アンダーでの優勝。今年、菅楓華が挙げたトータル9アンダーというスコアは、タフなセッティングを裏付ける結果となった。一桁アンダーでの優勝(短縮競技を除く)は、2014年の酒井美紀(5アンダー)以来だ。

初日は34人がアンダーパーだったが、2日目は強風の影響もあり12人に減少。2日目終了時点で首位タイに6人がつける団子状態となったが、これは1995年「大王製紙エリエール女子オープン」、2011年「ニトリレディス」に並ぶツアー史上最多タイの記録だった。その混戦の背景には、15番パー3の存在があった。

池越えのショートホールは、この大会を象徴する難関ホール。2日目は最大瞬間風速11.8m/sの強風に見舞われ、難度は急上昇。11人がトリプルボギー以上を叩く荒れ模様となった。

首位を独走中だった徳永歩はティショットを池に落としダブルボギー。同組の葭葉ルミは打ち直しも池で“+4”。政田夢乃もトリプルボギーを叩き、優勝候補が次々と失速。こうした要因が上位の混戦模様につながった。

2005年大会覇者でコースを知り尽くす横峯さくらも「今年は本当に難しかった」と語る。グリーン周りのラフも刈り込まれ、傾斜でこぼれても助からない状況。「ボギーでも仕方がない」と割り切るしかなかった。実際、2日目の15番の平均スコアは「3.7075」。今季のパー3で最も難しかった「ゴルフ5レディス」14番の「3.3652」を大きく上回る難度で、直近10年間で見ても最難関だった。

コースセッティングを担当した茂木宏美は「今年の15番は予選から決勝並みの設定にした。出場した全選手にこのホールの難しさを体感してほしかった」と説明。2日目は手前31ヤード・左9ヤード、最終日も手前27ヤード・左7ヤードというシビアなピンポジションとなった。

「ショットの方向性、縦距離、風の読み、番手の選択、攻めるか守るかの判断まで、選手が対応する要素は多かった。風が強まってさらに難しくなった」。一方で、パー5ではティグラウンドを前に出すなど全体のバランスも工夫したという。根底にあるのは「選手の成長を促す」セッティングだ。

優勝した菅も、勝因の一つに15番を挙げた。最終日はグリーン奥に外し、池を前にする難しい状況だったが、アプローチ後の「1.5メートルの下りパーパットを決められたのが一番大きかった」と振り返った。

15番パー3は多くの選手を苦しめた。ただ、その緊張感こそが観客やテレビ視聴者をひきつけた。現場で見守った筆者自身も、誰がどう攻め、どのような結果になるのか、選手のプレーから目を離せなかった。

豪快なバーディ合戦に胸躍ることもあれば、必死にパーで堪える試合展開に手に汗握ることもある。利府の15番が見せたように、耐える戦いが大会の色を深める瞬間は、ゴルフ観戦の醍醐味だと改めて実感した3日間だった。(文・齊藤啓介)

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