
<日本女子オープン 事前情報◇1日◇チェリーヒルズゴルフクラブ(兵庫県)◇6616ヤード・パー72>
16歳の飛ばし屋・後藤あい(松蔭高2年)は18ホールを回り、地元兵庫で迎える国内最高峰大会の最終準備を終えた。神戸市出身で、小学5年から穴井詩らを指導する石井雄二コーチのもとで腕を磨いてきた。この日は姉弟子の穴井と最初にインの9ホールを回り、アウトは仲村果乃らとラウンド。注目度が右肩上がりのアマチュアはリラックスムードも漂わせながら、入念にコースをチェックした。
「プライベートで何回も回ったことがあるので、コースのことは分かっているつもりです。フェアウェイは広く、ラフもそんなに長くない。グリーンはきれいでそこまで硬くもない。伸ばし合いになると思います。アンダーパーは出していかないとダメですね」
今年5月の「リゾート トラストレディス」で初めてレギュラーツアーに出場した。2戦目の「宮里藍 サントリーレディス」では4日間の平均ドライビングディスタンスで258ヤード(全体4位)を記録した。
3戦目の「ミネベアミツミレディス」は273.375ヤードをマーク。続く「ニトリレディス」は263.25ヤードで2位になると、「住友生命Vitalityレディス」では恒例のドラコン女王コンテストで277.8ヤードを飛ばし、穴井、神谷そら、小林夢果ら並みいる飛ばし屋プロを押しのけ、同コンテスト史上初となるアマチュアでドラコン女王の称号を手にした。
ただ本人は「そこまで飛距離にこだわっていません」と話す。「今、大切にしているのはメンタル的なこと。自分はミスをしたりすると、すぐキレてしまう。我慢強くなること。最近はボギーが来ても、気持ちを切り替えることができるようになった。ゴルフ的にも、メンタル的にも少しは成長しているかなと思います」。
9月1日に兵庫・小野GCで行われた日本女子オープン最終予選(2Bブロック)を3位で通過した。前日の8月31日は「ニトリレディス」の最終日。偶然に空席を見つけた新千歳~神戸の航空券を取り直し、会場の函館から千歳までレンタカーで移動して飛行機に飛び乗った。自宅に着いたのは日付が変わる寸前。それでも午前8時10分のティオフだった初日を首位で飛び出し、余裕を持って本戦の切符を手に入れた。
「最終予選は気合で頑張りました。女子オープンは日本一を決める大きな大会。地元での開催だったので、どうしても出たかったんです。飛行機のチケットが取れなかったら、新幹線で帰ってくるつもりでした。出られることになったので、目標は一つ達成しました」
憧れの大会を前に、数日前にはグローブの甲に『強くなる』とペンで書いた。この日の練習ラウンドの18番パー5(493ヤード)では、ティショットを気持ち良く振り抜くと、4番ユーティリティでの2打目をグリーン奥のラフまで運んだ。「ドライバーの調子はいいと思います」。気持ちは高まる。より遠くへ、より強く。日本一を決める初舞台は、新たな飛ばし屋伝説の始まりとなるはずだ。(文・臼杵孝志)