
<ANAオープン 2日目◇19日◇札幌ゴルフ倶楽部 輪厚コース(北海道)◇7066ヤード・パー72>
昨季の賞金王で米ツアーを主戦場とする金谷拓実がこの日「65」で回りトータル11アンダー・単独首位に躍り出た。その金谷を上回る9バーディ・1ボギーの「64」をマークしたのが、首位と11打差の114位タイから出たツアー1勝の出水田大二郎。出場選手120人中“ほぼ”最下位の順位から一気に首位と7打差の26位タイに上げて決勝ラウンドにコマを進めた。
前日の「76」から12打も縮められた要因は興味深々だ。「ショットもパットもよくなくて…」。ショットは特にセカンドが悪く、その原因は洋芝にあった。「洋芝だと上から打ち込みたくなるのです。それがきつすぎて薄く当たり右に抜ける。上体を起こして、緩やかな軌道で入れるようにしたらよくなりました」と洋芝対策を施した。
そして一番の要因はパッティングだ。初日の33パットに対して、この日は25パット。パーオン時の平均パット数で見ると『2.0000』の104位タイから『1.4667』の2位に急上昇しており、”大波小波“の要因が容易に分かる。
パットが良くなった理由は「2人のプロが見てくれましたから」と胸を張る。一人は今週キャディを務める九州の先輩プロ・川上幸輝。もう一人は、鹿児島県・樟南高校時代の先輩でツアー通算2勝の秋吉翔太。2022年にシードを喪失して復活の道を探っている最中。週明けにツアー外競技「札幌オープン」に出場するため、早めに北海道入りしていた。出水田が1ラウンド終了後に、川上キャディとスリムになった秋吉の2人がかりでアドレスやストロークをチェックしていた。
2人のアドバイスを消化して、この日のスタート前に最終調整をして臨んだ。「アドレスは少しハンドレイトになっていたのを少しだけハンドファーストに替えました。スタンスは狭くして、ボールに近づいて構えてクロスハンド。イメージは片岡尚之です」。パットの名手のイメージを持ちつつ、構えを変えたことで「球の転がりが強くなってよれなくなりました」と面白いようにバーディパットが決まった。
ショットとパットがかみ合って初日の大きな出遅れを取り戻した。過去の“出遅れ優勝”の記録は2001年「ダイヤモンドカップ」の伊澤利光が初日116位タイから。12年「アジアパシフィックパナソニックオープン」の小林正則が初日110位タイから。また、16年「ブリヂストンオープン」の小平智は初日首位と13打差から逆転した例がある。
逆転優勝に向けて最初は「無理でしょ」と笑って話したが、「でも今日の感じであと2日できたらけっこう面白いかもしれないですね」とまんざらでもない。
18年の「KBCオーガスタ」で初優勝を遂げた時は25歳。2勝目はなかなか遠いが今年32歳になりメンタルの成長はある。「ラウンド中、喜怒哀楽がだいぶ落ち着いてできるようになっている。昔だったら(5つ伸ばした)前半を終えて、ふがふがしていたかもしれないけど、落ち着いて後半も伸ばせた」とうなずく。歴史的な逆転Vに向けて、まずは落ち着いて3日目も伸ばしたい。(文・小高拓)