
<大東建託・いい部屋ネットレディス 3日目◇26日◇ザ・クイーンズヒルゴルフクラブ(福岡)◇6503ヤード・パー72>
ツアー初優勝を果たした「リゾートトラストレディス」から8試合目。稲垣那奈子がようやく“呪縛”を断ち切った。6バーディ・2ボギーの「68」で回り、トータル10アンダー。12位から首位と1打差の3位に浮上した25歳は声を弾ませた。
「ショットはだいぶ曲がってしまったけど、アプローチで頑張って、パットも入ってくれました」
4メートルを沈めた4番から3連続バーディを奪い、最終18番パー4は残り105ヤードの2打目をピン右手前1.5メートルにつけて、2連続バーディ締め。フェアウェイキープ率は42.9%(6/14)と精度を欠いたティショットは小技でカバー。ムービングデーに2勝目が狙える位置までしっかり追い上げてきた。
この約2カ月は、人知れず悩んできた。涙の初Vを挙げた翌週から3週連続で予選落ち。「アース・モンダミンカップ」では47位に入ったが、そこから2週連続で決勝進出を逃し、前週も50位と奮わなかった。
「いろいろと考えてしまって…。優勝してからは予選通過を目標にしていました。なんか守りに入ったというか、『優勝したんだから、予選は通らないといけない』とか、自分で勝手にそんな感じになっていました」
初優勝者の多くが経験する“あるある”だが、これに稲垣も縛られた。「下手なプレーは見せられない」「予選は通って当たり前」…。本来の思い切りの良さはなくなり、笑顔も消えた。「これじゃダメ。気にしているのは自分だけ。初心に帰ろう」と、奮起して臨んだこの福岡大会でV字回復。「もう、ほとぼりも冷めたと思うので」とジョークを飛ばす余裕も生まれた。
最終日は首位を1打差で追いかける。初優勝のときは3人の首位タイから最終日を出て、「73」とスコアを落としながらも我慢比べを制した。「あす、どうなるかな。伸ばし合いについていけないイメージがあるけど、パー5とかで伸ばしていきたい」。大混戦のV争い。呪縛から解き放たれた今週は、初Vの経験が大きな武器となるはずだ。(文・臼杵孝志)