第78話 人手不足の先を読む

株の神様の声が聞こえるというTさん。投資のコツや、ロボットやAIといった成長分野に本当に投資すべきか等、時折神様に相談します。今日は、宿泊や飲食、運輸、介護等、ニーズが高まる一方で、人手不足も懸念される業界の企業に投資すべきか、という話をしています。

神様: あなたは「人手不足が原因で逆に業績が伸び悩む企業もでてくるので、個々に見極めなきゃ」と話されました。実際に、運輸業の一部には外部への運送委託費を含めた人件費負担増もあり今期は減益を見込んでいる企業があります。あなたは、どのような観点で投資する会社とそうでない会社を見極めるのですか?

T: 例えば飲食や宿泊、運輸といった「キツイ」と言われ、人の出入りが激しい業界でも、離職率が低い会社を見つけるといったことをイメージしていますが…

神様: 離職率が低い企業は、高い企業と何が違うのでしょうか?

T: 従業員を大切にしているとか…

神様: 従業員を大切にしているとは具体的にどういうことでしょうか?

T: (神様の畳み掛けるような突っ込みにちょっと戸惑いながら)労働時間や休暇など、仕事と家庭生活のバランスに配慮する施策や、育児や介護等にも配慮した制度を整備している会社でしょうか。

神様: そうですね、つまり人手不足の業界でも、従業員のワークライフ・バランスを重視した制度が整備されている、もっと言うと 実際の運用を含めた取り組みの実績がある企業を見極める ということになりますね。また、従業員が喜ぶのはやはり給与が増えることでしょうから、給与増による人件費負担増を、利益を削るのではなく、値上げでカバーできる会社か否かというのも観点になりますよね。

T: 確かに外食産業では、そこが分かれ目になっているようです。人手不足の業界の会社に投資すべきか、深堀りや先読みというのはそういうことなんですね。

神様: 人手不足の業界そのものではなく、その周辺にも先読みのアプローチをすると良いですよ。

T: と、言いますと??

神様: 例えば省力化関連の機器を開発しているような会社です。

T: あっ、確かに。小売業でもセルフレジの普及を進めているチェーンがあります。人手不足で省力化関連の企業は確実に需要が増えますよね。

神様: その通り。セルフレジだけでなく、店舗の在庫管理や売価チェック、さらには来店客への商品提案までする自律移動型サービスロボットの開発を手掛けている企業もあります。

T: 省力化関連以外にも、人手不足の業界の周辺に目を向けると、求人や採用関連のサービス等、人手不足をビジネスチャンスに結び付けている企業は数多くありそうですね。

神様: そうです。いろいろと調べてみると良いですよ。企業の求人と働き手を結びつけるメディアではネットの求人サイトが伸びていますし、業界を絞った専門サイトの利用も進んでいます。人材派遣でも同様に専門化による高収益なサービスの展開を図っている企業も見られます。また、企業サイドでだけでなく、働く側の選択肢の幅を広げ、経験や能力を生かしたキャリア支援に注力する企業もあります。

Tさんは、人手不足の中で、本当に働き手のニーズを理解し定着や生産性向上の取り組みを実践している企業、苦境をチャンスに変えて躍進しようとしている企業には、投資する魅力が十分にあり、子供達の将来の仕事探しにも役立つので、家族で調べてみようと心に決めました。

(次回11/29「親から子への贈りもの」を掲載予定)

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