
スポーツカーの絶対王者と言えばポルシェというのは誰も異論はないだろう。その魂はSUVのマカンにも引き継がれ、EV化しながらも、次元の高い走りを楽しむことができる。今回はそのなかでもパワフルなEVモデル、その名もターボを取り上げる。
松任谷(以下、松):今日の予報では、あっちは濃霧注意報だぞ。大丈夫なのか?
編集部(以下、編):大丈夫ですよ。というか、今日行かないと松任谷さんのスケジュールに空きがないらしいですよ。
松:あ? そうなの?
編:そうなの、じゃなくて。クルマだってちゃんと借りてあるんだから行きましょうよ。
松:腰がなあ……。
編:あら? 言い訳してます? さっきから見てるけどちゃんと歩けてますよ。
松:そういう問題じゃないんだよ。テークバックで腰が痛いんだよ。
編:例の腰ベルト持ってるでしょ? このあいだもこれで大丈夫だったじゃないですか。
松:でも120叩いたぜ。
編:それはいつものことでしょ? 大丈夫。わかっていてやってるんだから。
松:仕方ねえなあ。じゃあ行くか。
編:格好はそれでいいんですね? まあジャケット着用の義務は無いところだからそれで許します。
松:トイレ……。
編:はいはい。ここで待ってますから。まったくジイさんは面倒くさいなあ。
松:お待たせ。
編:長いですね。いったいトイレで何やってるんですか?
松:携帯で天気予報見てた。
編:そんな長い時間?
松:本当はゲームやってた。
編:もう、本当にやる気がないんだから。さあ、行きましょう。松任谷さんの好きなやつですから。
松:そうだな。昨日まで素のマカン借りてたんだぜ。知ってる?
編:知ってますよ。グレーのやつでしょ? 今からあれを借りる同業者と一緒にラウンドです。
松:えっ? いったい誰? 誰?
編:内緒、内緒。でも大したことのない人ですから。
松:ま、なんとなく想像は付くけどな。仕方ないから行こう。
編:どうですか? ターボ。初めてなんですよね?
松:よく知ってるなあ。尾行かなんかしてるのか?
編:そんなの広報に聞けば分かりますって。でも、昨日まで素の方に乗っていたら比較もできるでしょ?
松:そうだなあ。忘れっぽいからなあ。どうかなあ。
編:とりあえずはどうですか?
松:どうですかって、座った感じは同じだぜ。で、これはどんなオプションが付いているの?
編:いろいろですね。まず、エアサスはターボでは標準。それとこれにはリアステアが付いてますね。ムーンルーフも付いているし。言い出したらきりがありませんね。
松:まあ、ポルシェのオプションリストは凄いよね。全部付けたらクルマと同じくらいの値段になるんじゃないの。
編:まあ、当たらずとも遠からずってとこですかね。これで411万のオプションですから。
松:何が一番高いの?
編:このクルマで言うとオーディオの53万円ですかねえ。
松:リアステアは?
編:27万円。
松:オーディオが大事な装備より高いというのも考えものだねえ。
編:でもEVだから静かだし、音楽を聴くにはいいですよね。
松:そうか……、まあ行くか。
編:そうですね。
松:おっ!! なんだこりゃ‼
編:どうしたんですか?
松:乗り心地がいい‼ 昨日まで借りていたやつとはずいぶん違うぞ。
編:素のマカンと比べてって事ですよね?
松:そうだな。まず細かい揺れが少ない。というかほとんどないね。それから大きな揺れの抑え方が違う。これは匠の技だね。
編:へえ、素のマカンはどうだったんですか?
松:あれはあれでポルシェっぽくて良かったんだけどね。
編:というと?
松:自然だし、路面状況をよく伝えるけれど、剛性感たっぷりだから安心できるというか……。
編:で、これは?
松:まだすぐには何とも言えないけれど、素のマカンにプラス揺れをなくした感じかなあ。普通さ、乗り心地をよくしようとすると、変な揺れ残りとか、どこか不自然さが出てくるんだけど、これは一切無いよね。もうビシッとポルシェそのものって感じ。これはマジックだぜ。
編:なるほどね。
松:もっと言うと、素のマカンだってエアサスのオプションが付いていたんだぜ。それなのに何でこんなに違うの?
編:情報によるとサスペンションの取り付け位置からして違うらしいですよ。
松:ターボでもないくせにターボなんて名前付けて変な奴だよな。
編:いや、ターボはもはやトップオブザレンジの代名詞ですから。
松:ところでポルシェに共通している魅力ってなんだと思う?
編:え? 何でしょう。
松:たまには考えてみろよ。
編:剛性感ですか?
松:カーン。剛性感だけだったらいくらでもいいものはある。
編:リセールバリュー?
松:否定はしないが、もっとクルマとしての魅力を探してみ。
編:日常性ですか? スーパースポーツとは違う日常感。
松:おっ、いい線いってるね。それはひとつだ。
編:他に何があるんだろう。
松:機械感。
編:というと?
松:どのポルシェも余計な味がないと思わないか?
編:ライバルと比べて、ですよね。例えばフェラーリとかランボとか……。
松:なんでもいいよ。AMGでもなんでも。
編:まあ、ポルシェの色気なんていう人もいるけど、僕は色気は感じませんね。
松:俺も。
編:なるほどね。削ぎ落とした魅力って事ですかね。
松:もちろん、これまでに無駄を感じたことがないとは言わないけど、その度に年次変更でビシってしてくるんだよね。とくに足まわりね。
編:いやあ、でもこの足まわりはパーフェクトですよね。
松:うん、パーフェクトだ。これ以上俺が望むものはないね。
編:それなりに背は高いはずなのに重心は低いし、リアステアは安全方向にちゃんと手助けしてくれている感じですよね。
松:あとね、無駄な演出もない。例えばステアリングはとくにクイックに躾けてないんだよ。穏やかなの。なのにスポーツドライビングになると、思った通りに曲がってくれる。リアルアスリートの感じね。それはペダル類も同じ。アクセルもブレーキも、優しく踏めば優しく効くんだよね。
編:ブレーキ凄いですよね。これ、ペダル踏むと回生ブレーキが効き始めるんでしょ?
松:昔、タイカンが出た時に、峠道の下りを一生懸命走ったんだけど、降りたら誰かがブレーキローターを触ってみろって言うんだよね。冗談じゃない。火傷どころの騒ぎじゃないから嫌だ、って言ったらそいつが実際触るんだよ。で、ほら、熱くない。温泉くらいですよって。
編:で、松任谷さんも触ったんですか?
松:仕方ないだろ。でも、本当に魔法みたいだったな。
編:危ないなあ。
松:ただ、個人的にはそんなことができるんなら、パドルを付けて欲しいと思ったね。他のメーカーがやっているようにさ。
編:何でですか?
松:だって、これ回生ブレーキ調整がオンとオフがあるんだけど、オンにしてもほとんど効かないからブレーキを踏んじゃうんだよね。高速道路とかで速度調整をしたい時にやたらブレーキランプを点灯させたくないじゃない。
編:確かにやたらチカチカさせていると、嫌がらせか初心者みたいですもんね。
松:高速道路ではオートクルーズコントロールを使えって事なのかもしれないけどさ。やっぱり自分で微妙に調整したいだろ。
編:わからなくもないです。あの……ちょっとアクセルペダルを強く踏んでみてもらえますか? 600馬力超を体感してみたいんで。
松:OK、じゃあ行くぜ。
編:ひゃー‼
松:ひゃー‼
編:凄いじゃないですか。テスラみたい。
松:確かに……でもあれよりも伸び感があるね。テスラは最初ドカン、であとは鈍っていくけど、これはグワーッとブラックホールに吸い込まれる感じだ。これは素のマカンにはなかったな。
編:仕方ないですね。値段も違うし。
松:パドルがないのが残念だ。
編:あったら買いますか?
松:テスラを売ってすぐに買うよ。
編:おっと、そんなこと言ってたらもう着きました。そこですから。早かったですね。
松:おい、なんだか変だぞ。クルマが少ないじゃないか。
編:あっ、コースクローズだって……なんてこと?
松:だからこんな霧じゃあ無理だって言ったろ。
編:素のマカンも来ているし一緒に写真でも撮りましょう。
松:いったい何してるんだろう、俺たち……。
PORSCHE Macan Turbo Electric
◆全長全幅全高:4784×1938×1621mm ◆車両重量:2480kg ◆モーター形式:永久磁石同期モーター ◆総電力量:100.0kWh ◆最高出力:470kW(639ps) ◆最大トルク:1130N・m(115.2kg-m) ◆ミッション:─ ◆WLTP一充電走行距離:518–590km ◆定員:5人 ◆価格:1525万円
写真/松任谷正隆&近藤暁史(ラゲッジ)
まとめ/近藤暁史(MUSHROOM)
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