
コーチングとは?
最近、色々な所で「コーチング」という言葉を目にするようになりました。
働くママであれば、会社の研修で体験したことがあるという方も多いのではないでしょうか?
まず、コーチングとは何かを簡単に説明すると、「目標達成に向けてのサポートを行うコミュニケーションスキル」です。そのスキルを使いながら、相手に気付きを促し、モチベーションやパフォーマンスを向上させ、ひとりで向き合うよりも行動のスピードと結果の質が高くなるよう伴走するのがコーチの役割です。
コーチングとティーチング
まず、分かりやすくティーチングとコーチングの違いを見てみましょう。
全く知識や経験のない相手に対して「何を」「どのように」「何のために」と一方的に方法やルールを教えていくのが「ティーチング」です。
一方で、答えを教えることはせず、相手の自主性や自立心を高めながら、その人自身で考えてもらうサポートをするのが「コーチング」です。
どちらが良い悪いではなく、相手や場面によって使い分けることが重要なのです。
とはいえ、この頃は“一方的に指示を出し、ただやり方を教えるだけでは相手のモチベーションが下がってしまい、本来持っているその人自身の能力が発揮されにくい”という考えが広まりつつあるのも事実です。
だからこそ、ビジネスの世界や教育の現場、そして子育てにもコーチング的視点が必要だと言われているのです。
スキルよりマインド
コーチングには「認める」「聴く」「質問する」などのスキルがあります。しかし、そのスキルをただ使うだけでは全く意味がありません。これらのスキルを使う上で最も重要なのは“どんなマインド(心・意識)で行うか”ということです。
「こうすれば良いのに」
「この人には難しそうだな」
「答えはこれだよ」
「それは間違っていると思う」
「どうして分からないのだろう」
「うまく引き出せないかもしれない」
こんな思いがマインドにあるままコーチングのスキルを使っても、誘導尋問になってしまったり、不安にさせたり、相手が本当に話したいことを話せなくなったりと、良い効果は期待できません。まずは相手を100%信じることが必要なのですが、その為にはコーチの側が自分自身を信じていなければいけません。
難しく聞こえますが、自分の強みや弱みなど、自己理解を怠らない姿勢さえあれば大丈夫です。
子育てに活かせるポイント
日常生活にコーチングを取り入れることと、コーチとクライアントという関係で正式なセッションを行うことは、もちろん異なります。
しかし、一度コーチングを知ると、子育ての中で「ここはティーチングか、いやコーチンングか!?」と、悩む場面が出てきます。これは、何も考えず「ああしなさい!こうしなさい!あれはだめ!」と思いつくまま口にしていた頃と比べると、素晴らしい一歩を踏み出していることは明らかです。
ちょっと心の余裕がある時にはコーチング視点で子どもと接してみてはいかがでしょうか?
「認める」
まず、「認める」というスキルです。
認めることは、決して「あなたはすごい!」とほめることではありません。”そこにあなたが存在していることを感じていると伝える”こと、つまり、無関心の反対です。
「ママ見て、見て!!」
子どもって本当に良くこの言葉を言いますよね。子どもは、ただ、ママに見てもらえるだけで満足するのです。実は大人にも同じ欲求があり、誰かに認めてもらいたいと思っています。
しかし、大人になればなるほど
「認める」=「良い評価をもらう」
となっていきます。
そうではなく、コーチングで言う「認める」は、良い悪いという評価や「こうに違いない」という思い込みを持たずに、そのまま受け止めていることを伝えます。
具体的には、
「目を見てうなずく」
「拍手をする」
「相づちを入れる」
「◯◯だったんだね」
「出来たね」
「見せてくれてありがとう」
などの言葉や態度です。
「もっと上手く出来るんじゃない?」
「またそんなことして」
「こうしたら良いよ」
などのアドバイスや評価は入れません。伝えたいことがあれば、まずは認めた上で”ママはこう考える”と言う方が良いでしょう。
「聴く」
続いては、「聴く」というスキルです。
聴くということを“スキル”と認識するだけでも、子どもの話への耳の傾け方は変わってきます。いかに普段無意識かが分かるでしょう。認めると同時に行うべき「聴く」ですが、音声として耳に入ってくる言葉を聞くだけではなく、言葉にしていない部分までも「聴く」ことが重要です。
この時も、ママが先に判断を下したり、話を遮ったりしないようにします話以外に、どんな感情なのか、身振り手振りや表情の変化まで感じ取ります。
そして、話したいことを安心してたくさん話してもらうために、認めると同様
「相づちを打つ」
「ペースを合わせる」
「それから?他には?と、つなぐ」
「要約する」
などを行います。
これまで、(何故かこの人の前では思うように話すことが出来ない…)と思った経験はありませんか?それはきっと、相手が心の中で評価や批判をしているのを感じ取っていたからかもしれません。
反対に、しっかりと話を「聴いて」もらえた経験もあることでしょう。その違いを意識して、子どものありのまま全てを受けとめた上で「聴ける」と良いですね。
「質問をする」
人は、質問されると考える生き物です。
子どもだって短い人生経験の中から必死に答えを見つけようと考えます。
この考える力を“間違った方向”で使わせないように気を付けたいのですが、その間違った方向とは「親が期待している答えや、求められていることを察して答えようと考えること」です。
このように、本当の気持ちが言えない状態にさせないよう「認める」「聴く」をコミュニケーションの前提にすることが必要です。
例1
「何でできないの!?」
は質問の形をしていますが責めているようにしか届きません。
そこで
「どうやったら出来るのかな?(質問)」
と言い換えることができます。
例2
子どもの
「OOちゃんに嫌なことされた」
に対して、
「そんなの気にしないの!」ではなく、
「嫌だったんだね。(認める・聴く)ママに何かできることある?(質問)」
と返すと、
「うん。嫌だった。うーん、だいじょうぶ、自分でOOちゃんに言ってみる」
というように、質問によって意外な答えが返ってくることもあります。
例2では、ママ自身は「気にしない」という方法で解決してきたので良かれと思ってアドバイスをしているかもしれませんが、質問をしたことによって「自分で聞きに行く」という力を子どもが持っていることを発見できました。
ここまでで分かるように、やはり「子どものことを信じる気持ち」があってこそ実践できるスキルなのです。自分も、子どもも大きく成長できる「コーチング」、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか?
*次回は「ママ自身に活かせるポイント」をご紹介します。
(文・亀山 美千代)