
国内男子ツアー「中日クラウンズ」でプロ15年目の31歳、浅地洋佑が4年ぶりに通算4勝目を挙げた。ウィニングパットを沈める際に涙腺が緩んだが、ここ3年苦しんだショットの不調から解放されたことの喜びだった。二人三脚でスイング修正を行ってきた植村啓太コーチに話を聞いた。
優勝会見で「ここ3年間はほぼいいことがなかった」と吐露する。2021年の「マイナビABCチャンピオンシップ」で通算3勝目を挙げた直後のオフ、「1~2週間休んで久々にクラブを握ってからずっとおかしい」。飛距離が出ない、曲がる…。「一番ひどいときはシャンク、ダフリ、トップと練習場でも当たらないんです」。普段のラウンドで80を打つことも珍しくなかったという。
優勝翌年の22年は賞金シードを喪失。23年は持ち前のショートゲームを頼りに賞金ランキング48位で何とかシード復活を決めたが、ショットの改善には至っていなかった。そこで白羽の矢を立てたのが、中学生頃まで師事していた植村啓太コーチだ。2024年1月から駆け込んだ。
「10年ぐらいコーチをつけていなくて、久々に見てもらっています。理論的に教えてくれて理解できるようになりました」
最初はバランスの修正から始まった。「最初来たときは、『ボールが飛ばない』といっていて、見るとインパクトでハンドレートの形になっていました。トップで左足体重になっていたのですが、両足にボールを挟んでヒザを使えないようにして、バランスよく振るようにしました」(植村コーチ)
最も気になったのは右ヒジの使い方だ。24年の中日クラウンズのスイングを比べると一目瞭然。1年前は正面から見るとヘッドが大きく動くオーバースイング。後方から見ると、トップではヘッドが右ヒジより左側にあり、クラブが寝た状態である。写真で見れるアイアンだと、トップでシャフトは地面と平行ぐらいだが、ドライバーになると平行よりもさらに進み、自分の左側からヘッドが見えそうなぐらいオーバーになっていたという。
トップで右ヒジが深く曲がり過ぎることが原因だが、そのトップからさらに体に引き付けるように下ろして、「クラブが寝過ぎた状態から、立たせるみたいな。インパクトからフォローにかけて右ヒジを伸ばして打つから、フォローで手元が体から離れていました」。フェードヒッターなのにアウトサイドに振り抜く形になり、軌道が不安定で左に曲がるボールも出やすかった。
浅地といえば手首を柔らかく使ってタメを生かすスイングが特徴だが、不調のときのタメは手首でなく、右ヒジを使ってタメていた。
修正法としては、右ヒジを曲げない意識を持たせた。24年シーズンの序盤は、不慣れなため取り入れていなかったが、予選落ちが続いたことから夏場以降に本格的に取り組んだ。その結果「フジサンケイクラシック」で10位タイ、「バンテリン東海クラシック」で9位タイに入り、終盤戦はショットに手応えを感じるようになった。昨年12月に行われたアジアンツアーの予選会も突破した。
右ヒジの矯正には器具を使用。アプローチ練習で右ヒジが曲がらないようにするためのものを装着してスイングしているという。「右ヒジを曲げない意識をすると手首をうまく使えるようになったので、トップがコンパクトになりました。後方から見てもプレーン上にヘッドが収まっている。クラブが体の正面にいる時間が長いからハンドファーストで打てるようになりました。フォローも手元は体の近くを通ってしっかり左に振り抜けています」と1年前とは見違える動きになり、浅地本来の良さも取り戻した。
復活優勝を見届けた植村コーチはプロになってからは初めて教えている。「小学生の頃から見ていた(浅地)洋佑の復活に貢献できてうれしいですね」と目を細めたが、「練習場でのスイングはよくなりましたが、まだ悪癖が出ます。右ヒジの曲がりは少なくなり、めちゃくちゃ悪いのはなくなりましたが、まだまだ完成ではありません。練習場のスイングができたら、もっとよくなります」と、まだまだ伸びしろがあるという。
4勝目を挙げたことで次の目標は「国内メジャー制覇」を掲げた。試合でも練習場のようなスイングができれば、まだまだ強くなる。
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