U-20日本代表、3大会連続準決勝敗退でアジア王者逃す…「それでは勝っていけない」W杯へ課題浮き彫りに

「悔いの残る試合」だったのは否めない。AFC U20アジアカップ2025、中国の深圳市で開催されている20歳以下のアジア王者決定戦に臨んだU-20日本代表は、26日の準決勝でU-20オーストラリア代表と対戦し、0-2で敗れ去った。

 3日前の23日に行われたU-20イラン代表との準々決勝で120分+PK戦を駆け抜けて世界大会の切符をつかんでいた日本だったが、もう一つの目標である「アジアチャンピオン」には届かなかった。イランとの激闘から一夜明け、「体が動かねえ」と言う選手もいたという日本は、この試合に向けて先発8名を入れ替えて臨んだ。対するオーストラリアは中3日と余裕があり、これまでの流れを踏襲した布陣である。

 この選択について船越優蔵監督は「コンディションのところはある」と振り返りつつ、「相手(の試合間隔)は中3日・中3日できてる中で、こちらは(中2日・中2日)というのはあった。そこで(後半途中から)パワーアップしてっていうプラン」で臨んだことを明かす。「チームとして後ろでブロックを組みながら守備をすると言われていた」とFW井上愛簾(サンフレッチェ広島)が振り返ったように、日本は慎重に試合へ入っただけでなく、そのまま前半を進めた。放ったシュートはわずか3本で、チャンスらしいチャンスはなかったが、「本当に途中までプラン通りだった」と指揮官は狙いどおりの試合運びだったことを強調する。

 ただ、「自信を持ってプレーしなければいけなかったのに」とDF土屋櫂大(川崎フロンターレ)が悔しさを噛み殺して振り返ったように、トライの少ないゲーム内容が満足いくものだったとは思えない。4-4-2で構えて粘るミドルブロックのディフェンス方法は日本のお家芸とも言えるものだが、“待ち”の守備意識が強くなり過ぎて、ボールへ圧をかけられなくなる悪い意味での伝統も出やすい。モチベーション高く、体力的にも十分な状態で臨んだはずの“控え組”が、0-0で慎重に試合を運ぶというプランに縛られたかのように、攻守に積極性を欠いていたのも気掛かりな部分だった。

「サッカーは75分以降にスコアが動く。そこが勝負」というのは船越監督が大会を通じて繰り返してきたフレーズであり、この試合もその勝負どころを見据えてのゲームプランだったのだろう。ただ、鬱憤の溜まっていた“控え組”を多数先発に送り出した試合で、“主力を投入してからが勝負”と捉えられてしまいそうな采配は、結果的に悪いほうへ出た。後半の立ち上がり、オーストラリアのキックオフから繋がれて早くも危険なクロスをゴール前へ送り込まれると、セカンドボールもあっさり回収されて波状攻撃を受ける流れとなる。49分の失点はスローインからの攻撃を逆サイドまで繋がれてサイドを突破されての失点。 “ボールに行けない”悪い意味での日本らしい守備が続いた末の失点だった。

 こうなってから、もう一つの問題があらてめて表面化していた。リーダーシップの不在だ。1人のキャプテン+4人の副キャプテンという体制をとった今回の日本だが、この試合ではキャプテンの市原吏音(RB大宮アルディージャ)だけでなく、副キャプテンも全員先発から外れていた。後半途中の57分からの出場となった副キャプテンのMF大関友翔(川崎フロンターレ)は率直にこう語る。

「(市原)吏音が出てない中でリーダーになる選手が前半はいなかったですし、自分が入ってからもピッチ内でもすごく静かで、あんまり意見交換もなかった。それでは勝っていけない」

 この大関の投入で変化が出たのは良くも悪くも象徴的だったが、「もうちょっとギアアップしたかった」と船越監督が言うように、リードを奪って心理面でも優位に立ったオーストラリアに対し、日本の流れは悪いままだった。DF髙橋仁胡と梅木怜を投入して前掛かりなサッカーへの変化を企図した直後の67分に2度目の失点を喫し、ほぼ勝負は決してしまった。

 結局、試合は0-2のまま終了。準決勝での敗退は3大会連続となり、あらためてこの試合に向かっていくマネジメントの難しさを浮き彫りにしたとも言えるが、攻守のトライを欠いたままだった前半の試合運び、相手のボールを見守るままに失点した後半の立ち上がりなど、対世界仕様を意識して編成されたチームとは思えぬ戦いぶりそのものが反省材料だろう。

 もちろん、U-20ワールドカップへの切符はすでに手にしており、そのミッションを達成した意義は大きい。ただ、今大会でゲーム体力や試合勘の不足を露呈した選手もおり、あらためてJリーグでの継続的な試合経験の必要性も感じさせた。9月末からチリで開催されるU-20ワールドカップへ向け、メンバー選考の見直しを含め、世界大会に向けてのチームのブラッシュアップは不可欠。もちろん、悔しい思いをした個々人の奮起にも期待したい。

取材・文=川端暁彦

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