「45度右に飛ぶ振り遅れでした」 臼井麗香はグリップの“振る方向”を変えて涙のツアー初優勝【コーチに聞く】

臼井麗香にとって初シードを獲得した2021年は希望に満ちあふれていた。2位タイに2度入り、初優勝は時間の問題に思われた。しかし、翌22年シーズンから長いトンネルに入り込む。22年はメルセデス・ランキング115位、23年は14試合の出場で同134位。そこから今年3月のツアー初優勝にどうやって立て直したのか。23年の秋からコーチを務める柳橋章徳氏に聞いた。
「昨年の9月、10月くらいから見始めたときはドライバーで右斜め45度に飛ぶくらいの振り遅れでした」と柳橋氏はいう。もともとトップでシャフトが飛球線より右に向く『クロス』を臼井は気にしていた。それを左に向く『レイドオフ』に直したことで、切り返しでの力のかけ方やタイミングにエラーが生じ、迷宮に入る。スイング改造のスタートは、気持ち良く振れていたシャフトクロスに戻すことだった。

「本人は『見た目が…』と言っていましたが、それはどうでもいいと話しました。切り返しでクラブのトルクを感じることによって、切り返しのタイミングを取っている場合もある。レイドオフにしたらトルクが消えるんです。クロスでもダウンスイングで右ヒジが体の前に入ってきていればOK。彼女の場合は普通に振ったらクロスになるのを、無理にレイドオフにしようとしていた。見た目よりもクラブを上手に使うことの方が重要なんです」

柳橋氏はトップの形よりも、切り返しからインパクトにかけてのクラブの流れを重視している。指導前の臼井はグリップをいきなりボールに向かって振り下ろしていたため、クラブに上手く力がかからずに「抜けてしまっていた」。ダウンスイングでは右ヒジが体の正面から外れ、クラブが寝過ぎて振り遅れる。そこで、切り返しのタイミングとグリップの振る方向を変えていった。

「ブランコはどのタイミングで力をかけて加速させるのか。落ちる直前ですよね。それもいきなり落下地点の方向にはこいだら加速できない。スイングの場合は体を通して、グリップに力をかけているわけです。切り返しからボールに向かって振っていくと、物理的に先端が早く落ちてクラブが寝てしまうんです。シャフトのしなりも使えません。だから、グリップエンドの方向に下ろすようにしました」

練習では柳橋氏がトップでシャフトを持ち、下ろす方向を矯正。これをやると、グリップエンド側に引っ張らないと力が抜けてしまうのがよく分かる。スイング改造に取り組み始めて1、2カ月で振り遅れが収まり、「来年(24年)は大丈夫」というところまで良くなった。「もともとシードを獲って優勝争いもしていた選手。その時にできていた動きが、考えすぎたりして何かの拍子にできなくなった。『こんなんでいいの?』というくらい考え方をシンプルにしました」。

そして24年3月、主催者推薦で出場した「アクサレディス」で涙のツアー初優勝を遂げる。しかも臼井にとってのシーズン初戦で、「まさか勝つとは思わなかった」と柳橋氏も驚く勝利だった。優勝会見で臼井は「シード1年目(22年)が私の中では一番苦しくて、毎週毎週、泣きながら練習ラウンドしていたんです。持っていた球が打てないし飛距離が出ない。自分の良さが全部消えちゃって、どうやってゴルフをしたらいいのか分からなくなりました」と当時の苦悩を明かしている。

19歳のときに自ら書いた目標は「21年に初優勝して、賞金女王は27歳」。初優勝は3年遅れてしまったが、来年12月が27歳の誕生日となる。柳橋氏と取り組んできたスイング改造は優勝によって大きな自信を得た。来年以降もさらなる活躍に期待がかかる。

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●柳橋章徳氏は23年の稲見萌寧の復活優勝にも貢献している。関連記事の【昨年、自己ワースト4試合連続予選落ち スイングの迷路に迷い込んだ稲見萌寧を復調させた1つの練習器具】では、稲見の頭の中をシンプルにさせた練習法を紹介している。

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