株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェでアイスコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。
T:5月末に電力会社各社から6月使用分の電気料金の値上げが発表されました。国内では物価高が続いている中での値上げです。家計にとってはさらに厳しい状況がやってきますね。
神様:ロシアによるウクライナ侵攻などを背景としたエネルギー価格の高騰により、政府は2023年1月から2024年5月使用分まで電気・都市ガスの利用料金を値引きする施策である「激変緩和措置」を行ってきました。これが5月分で終了し、6月使用分からは値引きがなくなるため、値上げとなります。
T:ロシアによるウクライナ侵攻は終わりが見えない状況ですし、今後の電気料金がどうなっていくのか気になるところです。電気・ガス代を少しでも安く抑えるためには、省エネ・節電に励むしかありませんね。
神様:世界のエネルギー情勢が大きく変化する中、電力などの身近なエネルギーがいかに貴重なものであることかを実感しますね。日本では2050年カーボンニュートラルの実現へ向けて様々な取り組みが行われていますが、例えば大気中のCO2を除去するのにもエネルギーが必要です。世界情勢がどんな状況であろうとも、今後もエネルギーが貴重なものであることは変わりありません。大切に使いましょう。
T:確かに。電気やガスがなければ、私たちは何もできませんから。
神様:ところで、私たちにとって電気・ガスなどと同じように貴重なのは「水」です。今日は水のお話をしましょう。エジプト・カイロで4月28日から30日までの間、水処理技術展示会「Watrex Expo」が開催されました。世界から80カ国、400社以上が参加した中、日本からも浸透膜やポンプ関連の企業が出展しました。日本企業は技術力の高さで注目を浴びていたようです。
T:水資源については以前もお話がありましたね。浸透膜については、確か「逆浸透膜法(RO)」( 第387話 世界の人に十分な水を!水不足問題で活躍する企業とは? )と呼ばれる方法が海水を淡水化する方法として期待されているのでした。
神様:その通りです。エジプトでは水資源が乏しく、海水から淡水を生産する技術が切実に求められています。日本企業の技術力の高さには、エジプトでも大きな信頼があるようです。
T:世界の人口が増加していく中で、エネルギー同様に水資源も今後ますます貴重なものになっていきます。ここは世界に存在感を示すチャンスである、ということですね。
神様:地球上の水の総量は、約14億立方キロメートルと推定されています。その中で、海水などの塩水が97.47%を占めています。淡水はわずか2.53%です。さらに、水資源は米国やヨーロッパに偏在している傾向があります。したがって、人口増加率が高いアフリカなどでは将来の水資源不足への懸念が深刻化する状況にあります。
T:その水不足の解消のために、海水を淡水にするためのプラントの建設が進められているのですね。
神様:おっしゃる通りです。昔は海水を煮沸して淡水化するタイプが主流でしたが、現在は膜によるろ過の手法がメインとなっています。海水淡水化プラントでは、ろ過膜を中心にさまざまな日本企業が活躍しているのです。
T:しかし、海水を淡水化するためには多くのエネルギーが必要なのですよね。冒頭のお話ではありませんが、大気中のCO2を除去するのと同じように、自然には起こり得ないことを実現しようとすれば、それだけエネルギーが必要である、ということですね。
神様:その通りです。プラントには多くのエネルギーが必要です。また、プラントから出される排水は海に戻しますが、塩分濃度が高く、海水の塩分濃度も高くなってしまうという課題もあります。最近では海水に下水を混ぜてから処理することで低コスト化を図り、排出する水の塩分濃度も抑えることができるシステムも推進されています。今後はいかに省エネルギー、低コスト化が実現できるかがポイントですが、日本の企業への期待感はとても大きいのです。
T:水は人間が生きていくのに欠かせない命の源です。今後の活躍に期待したいと思います。
(この項終わり。次回6/12掲載予定)
提供:いちよし証券
「兜のささやき」全話はこちら
○当記事は各種の信頼できると考えられる情報をもとに作成しておりますが、その正確性・完全性を保障するものではありません。
また、今後予告なく変更される場合があります。
商号等/いちよし証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第24号
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会