第71話 ESG投資って何?(その1)

株の神様に投資の本質を教えてもらっているTさんは、奥さまのA子さんや高校生の娘Y、中学生の息子Sにも、将来役立つと思い、わかりやすくそのポイントを伝えています。今では、家族でよく社会の動きと株式投資の話をするようになりました。

S:パパ、電車の吊り広告に『これからはESG投資』ってキーワードが出てたんだけど『ESG投資』って何?

T:せっかくだから、みんなで考えて当ててみようか?

Y:“E”は環境=EnvironmentのEじゃない?環境にやさしい取り組みをしている企業に積極的に投資しようという意味で。

T:すごいね!あたりだ!!

A子:“S”は持続的=Sustainableじゃないかしら?持続可能な社会づくりに貢献している企業に投資しようという意味で。

S:“G”はGoalかな?これからの未来に良い目標を掲げている企業を応援しよう!みたいな意味で。

T:“S”と“G”はおしいけど、正解は、Sは社会=Social、Gはガバナンス=Governanceなんだ。

Y:“E”の環境はわかりやすい気がするけど、具体的にはどんな意味なの?

T:例えば、“E”の環境は、二酸化炭素排出による地球温暖化対策に熱心な企業はもちろん、危険な化学物質を使わない、水資源をムダにしない取り組み、生物の多様性確保に配慮しているなど、内容や対象企業が広がっているね。

S:“S”のソーシャルは?『社会』って随分広そうだけど??

T:そうだね。Sは地域社会での貢献活動に熱心な企業も対象となるし、従業員の健康にしっかりと配慮している企業、それに女性活躍はもちろん、人種や宗教、障害の有無などに関わらず、多様な人たちが活躍する場や組織づくりに真剣に取り組んでいる企業に、積極的に投資しようという考えだね。

A子:“G”の『ガバナンス』は、情報の開示や株主との対話に熱心な企業ということよね?

T:そうだね。社外取締役の独立性を確保しているかといった企業統治の体制や、公正な競争やコンプライアンスに誠実に向き合っているか?といったことも重視されるね。

A子:最近でも、不正経理や事故隠しみたいな、反対の姿勢の企業も多いものね。

T:その通り。そういう企業は、それこそ存続の危機にある例もあるよね。だからこそ、投資するための企業評価として、業績見通しや財務情報だけでなく、非財務情報である『ESG』に対する企業の取組み姿勢を考慮した投資手法が重要視されるようになってきているんだ。

Y:すごくいい考え方みたいだけど、広まっているの?

T:欧米中心に広まっているよ。去年(2016年)、世界のESG投資残高は約23兆ドルにまで増えたそうだよ。国際連合が2006年、投資家がとるべき行動として責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)を打ち出し、『ESG』の観点から投資するよう提唱したため、欧米の機関投資家を中心に、企業の投資価値を測る新しい評価項目として関心を集めるようになったんだ。

S:日本ではこれからなんだね?

(この項続く。10/11掲載予定)

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