
<ヒルトン・グランド・バケーションズ・トーナメント・オブ・チャンピオンズ 3日目◇20日◇レイクノナG&CC(米フロリダ州)◇6608ヤード・パー72>
ひとつのプレーが、この2日間のモヤモヤを吹き飛ばしたようだ。稲見萌寧は「66」をマークし、6オーバーからトータルイーブンパーと“原点回復”。米ツアー初戦でビッグスコアをたたき出したが、「流れがつかめた」と振り返るのは前半の14番パー4だった。
この日232ヤードに設定されたホールでの、ドライバーショットは「完璧」。しかし、それがバンカーにつかまり、15ヤードのリカバリーショットが残った。だが、この2打目が「思い通りにいってくれた」とそのままカップイン。米国で初となるイーグルを奪い、キャディ、そして同伴競技者とハイタッチで喜びを分かち合った。
「きのう、おとといとラッキーもなかったので、それがこのホールで来てくれた。その後もずっと手がジンジンするくらいキャディとハイタッチしました(笑)」。2日続けて「75」と苦しんだこれまでのうっぷんを、一気に吐き出した。
さらに後半に入ると、そこで“つかんだ勢い”が加速。4つのバーディを積み重ねた。これには、1バーディ・4ボギーという結果に肩を落とした前日のラウンドで得たものをしっかりと生かした。2日目の後半からグリーン上で「自分の感覚だけに頼ろうと思った」ということを意識。それに手応えを感じ取っていたため、さらにブラッシュアップした。
まず、稲見がパッティングを打つ前に行う、手のひらをカップ方向に広げるようにしてラインを読むエイムポイントをやめた。さらにターゲットを狙うためにつけてあるボールのラインも消す“大改革”。とにかく感覚を研ぎ澄ませた。「チャレンジしてみました。きのうのをグレードアップしました」。変化を恐れない姿勢が生んだ“-6”という結果でもあった。
前日まで2日続けて10回止まりだったパーオン数も、この日は15回まで回復。生命線に輝きも戻り、「ショットバーディがこの2日間獲れてなかったので、よかった」と胸をなでおろす。「アンダーが出る気配がしなかったので、60台が出てホッとした。すべて楽しく回れました」。きのうとはまったく異なる気持ちでグリーンをおりることができた。
スタート前の順位は35人中34位だったが、それも23位タイまで上昇。さらに上を狙う態勢も整った。「引き続きいいプレーができるように頑張りたい」。洗礼を浴びるのではなく、今後への希望を強くするデビュー戦にしたい。(文・間宮輝憲)